2016年7月29日金曜日

「職務経歴書」を定期的に書くことの勧め



このところ、企業の人手不足感が顕著になっていますが、ある調査によると、求人数と転職希望者数ともに、調査開始以来の最高値を更新し続けているのだそうです。
たぶんこれからも、この環境はしばらく続くのではないかと思います。

もしも転職活動をするとなると、誰でも必ず「職務経歴書」を書くと思います。それまでの自分の仕事の経験として、どんなことをしてきたかを相手に伝えるものですから、転職においては一番決め手になる大事な書類ですし、この書き方を指南するような手引きは、ずいぶんいろいろなところで目にします。やはり、書いたことがないと、何をどこまで、どんな書き方をしたらよいのかがわからないということがあるのだろうと思います。

これは、ときどき見かける話で、私自身もいろいろな人に言っていることですが、転職をするしないに関わらず、自分の職務経歴書を作って、それを毎年定期的に更新することをお勧めしています。

なぜかというと、会社の中で自分のキャリアを取り立てて意識しないままで過ごしていると、例えば、1年2年という期間を経過したにもかかわらず、自分の経歴書に書き加えられることが何もないということが起こってきます。自己キャリアの停滞ということですが、普通に日常を過ごしていると、そのことには意外に気づかないものです。

こういう人が転職を考えたときに、職務経歴書を書いてみて初めて気づいたりするわけですが、このような停滞が、実際に転職をする上においては大きなマイナスになることが多々あります。

こういう状況を防ぎ、今の自分ができることは何なのかを確認しておくという意味で、定期的に職務経歴書をまとめておくと、自分が持っているスキル、キャリアの特徴、セールスポイント、反対に不足していることなどを把握することができます。

もしも職務経歴書の内容が2年続けて変わらないようなことがあったとすれば、他人に伝えられるような成果がその期間にはなかったということになってしまい、もっと厳しく言えば、その期間には自分の進歩はなかったということになります。経験年数が増えているのに中身が変わっていないということは、実質的なレベルは下がっているということになります。

ともすれば、何となく日常に流されてしまいがちなところですが、そのことに気づかないままでいると、いざというときに取り返しがつかない状態になってしまいます。
自分のキャリアを定期的に可視化して確認していけば、常に自分の現在地を知ることができ、自分の取り組み次第でそんな事態は避けることができます。キャリアの可視化のために、「職務経歴書」というのは、意外に有用だと思います。

転職を考えていなくても、一度は自分で「職務経歴書」を書いてみて、直近数年で書き足せることがなかったとしたら、あらためて自分のキャリアのことを真剣に考えてみる必要があると思います。


2016年7月27日水曜日

「敵が少ない」が良いことではなかったという話



「相手に好かれなかったとしても、せめて嫌われなければその方が良い」などと言う人がいます。
私自身も、どちらかというとこういう考え方をするタイプで、自分としての限界は当然ありますが、できるだけ多くの人と幅広く、フラットに付き合いたいと思っています。「付き合いが広い」と言われることも、「八方美人」と言われることもありますが、「敵が少ない」に越したことはないと思っています。

しかし、今回の話は、この考え方にはちょっと反するような内容です。

ある会社の社長ですが、最近先代から社長の座を譲られた新社長です。先代社長は会長となり、第一線からは退く形になっていますが、社長を譲って数カ月が経ち、どうもこのままではまずいと思っているそうです。

その理由は、新しい社長が「自分からは何もしない」からだそうです。「社長の仕事を何もしない」という言い方をしています。
これは会長からの一方的な話なので、多少言い過ぎのところもあるでしょうが、一部の社員にそれとなく聞いても同じようなことを言うので、社長の行動に問題があるのは確かだろうと思います。

特に「自分からは何もしない」ということについて言えば、どうも人と会うことがあまり好きではないらしく、社長として顔を出してほしい会合、会ってほしい顧客や協力会社など、現場が相当にプッシュして、ようやく嫌々出てくる感じなのだそうです。
会社には毎日きちんと出社してきて、終業時間に近い頃まではいるそうですが、来客はそれほど多くなく、夜の付き合いもほとんどしません。
また、仕事の上でも、自分から何か資料を要求するようなことはなく、現場がまとめて上げてくる経営資料や報告資料などには目を通してコメントするものの、何か指示らしい指示が出てくることはないそうです。

しかし、この新社長は、会長が自分自身の目で選んでいます。なぜかと理由を聞いてみると、本当にがっかりした顔をしながらとおっしゃったのは、「一番敵が少なかったから」ということでした。

聞けば、どうも他にも候補者は2人ほど頭の中にあったそうで、その人たちも含めた3人の候補者のそれまでの実績には大きな違いがなく、能力的にはほぼ横並びと見ていたそうです。
ただ、新社長以外の2人は、それぞれ多少癖があって、部下、顧客、その他周囲からの評判は、善し悪しが二分されていたのだそうです。それに対して新社長だけが、人間関係の良くない評判はほとんどなく、それほど好かれている様子ではなかったものの、最終的にはそれが決め手で選んだのだそうです。

しかし、今となってみると、「敵が少ない」のは自己主張がなかったから軋轢を生まなかっただけであり、過去の実績も、自己主張しない上司を、部下たちがうまく転がしてくれていたからだとわかったそうです。「自分からは何もしない」から、誰とも対立することがなく、その結果として何となく「敵が少なかった」ということだったようです。

会長は、「自分の見込み違いだった」「うわべしか見ていなかった」「人を見る目がなかった」などと、反省しきりです。こちらの会社は、もう一度会長が仕切ることで、組織の立て直しをしていくのでしょう。どこかで社長も交代するのかもしれません。

このお話は、私の経験でもほとんど聞いたことがない、「敵が少ないこと」がマイナスに作用したという例ですが、考えてみれば、他人との接点がなければ敵などが生まれるはずもなく、そういう状態での「敵が少ない」は、裏を返せば「人付き合いがない」「議論をしない」「自己主張がない」などということにつながっています。

「敵が少ない」も、反対に「敵が多い」も、実はその中身をよく見なければいけないのかもしれません。

2016年7月25日月曜日

「ポケモンGO」はやらなくても、ITへの興味は仕事で必須



「ポケモンGO」というスマホゲームが、ずいぶん話題になっています。
外を歩き回ってリアルにポケモンをゲットするゲームだそうですが、歩きスマホを助長してしまうとのことで、実際に事故が起きたり、立ち入り禁止の場所に入り込む人が出てきたり、何かと問題も起きているようなので、その点だけは注意してほしいと思います。

私はそもそもゲームをまったくやらないので、たぶん自分でプレイすることはなさそうですが、リアルな風景の中にポケモンが現れるとか、コレクションしていく感覚だとか、ゲームの企画力に技術が融合している感じがして、その点ではとても興味があります。

でもそれは、新しい物への興味とか、技術への興味といったものなので、ゲームをやるかと言われると、やっぱりそれはない感じですが、私の周りでもやっている人はたくさんいて、そこではかなり盛り上がっている人と、反対にまったく興味がない人に分かれています。
中には嫌悪感までを持っているような人もいるようですが、そういう人を見ていると、他でもLINEは嫌だとか、スマホはいらないとか、どちらかといえば、新しいものにすぐ飛びつく志向そのものを嫌っているように感じます。新しもの好きに対する新しもの嫌いといったところでしょうか。

こういう話は昔からあって、私が思い出すのは、メールが普及し始めてビジネスでも使われ始めた頃のことです。
特に年長の方々は、積極的に使う人とできるだけ避けようとする人に分かれ、最近でこそ聞かなくなりましたが、自分のところに来たメールを、すべて印刷させるような仕事を命じる社長や管理職がいました。
電話であれば、本人が直接やり取りをするので、誰かが間に入る必要はありませんが、メールになったことで余計な仕事が増えた秘書や事務担当の人は、大勢いたのだろうと思います。

また、これも今は聞かなくなりましたが、かつては上司が赤入れした書類をワープロで修正するような仕事を頼まれるということがありました。直す場所が日付の数字一文字だけだったりして、それくらいなら自分でやった方が手間がかからないだろうと思ったことは、一度や二度ではありません。

これは少し話が違いますが、あるマンションの一室の小さな会社で、訪ねると社員が一人で大汗をかいて座っています。エアコンをつけたら暖房になっていて、切り替え操作がわからないのでそのまま我慢していたそうです。

メカ音痴もここまでくるとかなり問題ですが、そこまでではなくても、会社の中で、自分でできるはずのIT作業を、誰かに押し付けて肩代わりさせるような人は、今でも結構いるように思います。多くは中高年者で、誰かに命令できる立場の人です。
それはもうとっくに通用しない時代になっていると思いますが、にもかかわらず、IT機器を使うことを他人にやらせる人がいるのは、やはりITは苦手、もしくは興味がないということなのでしょう。

ただ、ゲームならばやらないことだけで済みますが、仕事で関わるITではそうはいきません。
嫌がる人がいると取り上げたLINEの話で言えば、ビジネス上のコミュニケーションでLINEを使う人たちは、最近ものすごく増えています。セキュリティリスクがあるということで、同じようなチャット機能のシステムを社内クローズの環境で導入している会社もあります。

きっとそのうちLINE自体でも、ビジネスアカウントのようなものを作りそうな気がしますし、すでにビジネス用のLINEスタンプなどもあるようです。

このように、ITの技術、サービスというのは加速度的に進んでいて、新しい便利なものがどんどん出てきています。もちろんITが苦手という人はいるでしょうし、プライベートであれば、それを使おうと使うまいと個人の勝手ですが、ビジネス上のこととなるとそうはいきません。人任せでは誰も相手にしてくれず、コミュニケーションの輪から外されていきます。

それを避けるために必要なのは、やはり「興味を持つこと」だけしかないと思います。
特にITに関しては、「興味がない」ではもう仕事の上で通用しなくなります。いまさらですが、ITへの興味は、もう必須の仕事能力なのではないでしょうか。