2017年12月1日金曜日

取引先が交渉に応じてくれなかった理由がSNSだったという話



これはもう何年も前にある社長から聞いた話ですが、私も当時は一層注意しなければならないものと感じ、今でもなお戒めにしていることです。

この社長はとてもアクティブでフランクの人柄で、付き合いも広い人でした。当時からSNSをよく使っていて、食事の場面や出かけた先の様子などを頻繁に投稿していました。写真が好きな人だったので、いつも映りの良いきれいな写真付きの投稿です。SNSの使い方としては、ごく普通の一般的なものだと思います。

そんな中、ある時期に少し会社の業績が思わしくないことがあり、会社の中ではいろいろな対策をおこなっていました。
経費削減の話も当然のようにありますが、そこで一部の発注先に単価の引き下げを要請しようということになり、取引関係が長く、こちらの事情を理解してくれそうな、ごく一部の会社だけに絞って話をしてみることにしました。無理をお願いする訳ですから、経営トップとして社長自身が頭を下げに行かなければなりません。

そこで、特に懇意にしているある取引先企業を訪ねたとき、応対してくれた先方の社長から、わりと強い調子で単価引き下げの話を拒否されてしまいます。その理由の一つとして言われたのが、この「社長のSNS投稿」だったそうです。

「いつも優雅に旅行ばかりしている」「いつも高価そうな店で食事をしている」「いい車に乗っている」などと言われ、「そんなことをしている社長に“会社が厳しいから協力してくれ”などと言われても、とてもそういう気持ちにはなれない」「もっと自分たちの会社の中でできることがあるのではないか」と、半ば門前払いで交渉を拒否されてしまったのです。
理屈だけで言えば、社長個人の財布と会社の財布は全く別物ですから、個人的な行動を理由にした交渉拒否はあまり理性的とはいえませんが、相手の気持ちを察したこの社長は、ただ自分の失礼を謝るしかありませんでした。

このことをきっかけに、社長はあらためて自分のSNSの使い方を考えます。本人はただ楽しい、おいしい、きれいといったその場の感情を発信していただけで、まったく他意はありませんでしたが、これを他人が見たときには「優雅に遊んでばかりいる」「セレブ自慢」などという嫉妬も産んでしまっていました。

また、写真投稿を頻繁にしていましたが、写真というのは見方によって様々な情報を得られるため、その中に意図せずたまたま映り込んだものが、思わぬ印象を与えていたりします。乗っている車、持っている品物、同行している人などが、誤解も含めていろいろ発信されてしまいます。

社長はもうSNSはやめようとも思いましたが、SNSには幅広い交流を続けられるメリットもあり、そのすべて捨ててしまうのももったいないと感じます。SNSのつながりから実際の仕事に発展したこともありました。
その後は頻繁な投稿は控えるようにし、何か発信する時は今まで以上に慎重に、それを見た人がどんな印象を持つかを考えるようになりましたが、この社長は「とにかくSNSは慎重に使わなければならないことが身にしみてわかった」と言っていました。

最近は企業広報のような情報発信にもSNSが使われます。ただ、SNSの場合は、特にこちらが意図しない情報を意図しない形で受け取ってしまうことがあります。炎上などと言われて批判が集中するような例は、SNS特有の伝播速度の早さにも一因があります。一気に広がるので後から取り消すことが難しくなります。

情報収集やコミュニケーションには便利なSNSですが、「自慢」「攻撃」「見下す」など、普通の人間関係でも嫌われることは絶対にしてはいけません。相手の反応がリアルに見えない分、よけいに注意しなければならないと思います。

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