ソフトウエア開発会社の「サイボウズ」には、育児休暇ならぬ「育自分休暇」という制度があるそうです。
35歳以下の社員が対象で、いったん退職して最長6年間は復職が可能というシステムで、制度活用を希望する社員は、退職期間中の活動などを書類提出し、認められれば制度を利用できるそうです。期間中は転職、長期旅行、その他何をしてもよく、いちいち会社への近況報告も不要だそうです。
また、復職したいとなれば、数カ月前に報告するだけでよく、復帰後の役職や給料は面接を実施して決定し、6年たって復職しないとなれば、その意志を尊重するのだそうです。
会社の仕事に誇りを持った優秀な社員が心の奥で思う、他の仕事や活動に携わってみたいというチャレンジ精神を応援することで、そのノウハウを将来的に会社に還元するという長期的な戦略があるのだそうです。
一見すると退職を助長しかねない制度ですが、担当者は「長く当社で働いてもらいたいからこその制度だ」とおっしゃっています。
このような、出戻り奨励ともいえるような制度は、導入事例を最近はときどき聞くようになりました。ある調査では、7割以上の会社が「出戻り社員」を認めるという結果もありますので、このあたりの意識はずいぶん変わってきているのだと思いますが、このようにはっきりと制度化しているところは、まだそれほど多くはないように思います。
やはり自社の知名度、待遇、業界内の位置づけ、従業員満足度などから、さすがに制度化までするのは躊躇する会社が多いと思いますし、もしも私が自分のクライアントに提案するとしても、相手の会社の様子を深く知っていないと、同じように躊躇するだろうと思います。
ただ、かつてであれば、ある程度の枠の中に押し込める画一的な制度でよかったでしょうし、そもそも制度というのはそういう性格のものでもある訳ですが、多様性、ダイバーシティが言われる今の時代では、ただ杓子定規に会社の一方的な都合で制度を決めるという訳にはいかなくなっています。
会社は優秀な人材をできるだけ自社にとどめておきたいと考えますが、優秀な人材ほど自分のことは自分で考え、自分の意志で決断します。ある枠に中に閉じ込めようとすればするほど、それに反発したり、外の世界に目が向いたりしがちになります。
すべての会社に当てはめるのは難しいのかもしれませんが、特にキャリアに関することは、あえて社員に委ねることで、結果的には優秀な人材が集まってきて、その人たちが長く働いてくれることにつながるという考え方もわかる気がします。会社はそういう人材に選ばれるような取り組みが必要だということです。
どんなことでもそうですが、抑え込もうとすれば、それに反発する力量がある人ほど離れて行ってしまうのは、確かなことだと思います。社員に委ねるという視点は、これからの会社の仕組みづくりの中では、持っておく必要があることではないでしょうか。