2020年7月9日木曜日

「上をチヤホヤする人たち」がいる会社の先行き


新型コロナの影響で在宅勤務をする機会が増え、それとともにリモート会議に参加することが増えた人は多いと思います。

様々なツールがありますが、基本的には複数の人と同時につなぐテレビ電話で、画面に参加者の顔が分割で映し出され、お互いに会話ができるというものです。

実際に体験してみると、これだけでも意外に用が足りてしまうことがわかり、これから新しい働き方が進んでいく中では、この機能が重要な位置を占めていくと想像されます。



そんな中、SNS上で目にした話題ですが、このリモート会議システムで「画面を役職順に並べたい」とか「上の人ほど画面を大きくしたい」という要望をしてくる会社があるそうです。

そもそも画面上に上座下座の概念があるのかわかりませんが、会議という場の主旨としてはまったく意味がないことです。私などは瞬間的に「くだらない」と思ってしまいますが、たぶん言ってくる人たちは大真面目でしょう。



ネット上では「今どきそんなこと考える会社なんて…」という否定的な論調がほとんどでしたが、多くの日本企業の現場の様子を見ていると、声は上げていなくても、「偉い人を上に」という感覚の人は、実はかなり多いのではないでしょうか。



こういう部分は、まさに「社風」が見えるところなので、私はよく観察しています。

このSNSのような発想が出て来るのは、社内の序列や上下関係に結構厳格なこだわりを持った、間違いなく「古い」タイプの価値観を持った会社でしょう。

そんな会社が「会議を円滑に行う」という機能に最適化した「新しい」リモート会議ツールを使う中で、暗黙の序列や上下関係が表現できないことに、違和感をもってしまったのではないでしょうか。



そしてこういう場合、役職者本人が「自分を上に映してほしい」などということはめったになく、ほとんどは本人以外の誰かが言い出します。

社内の宴会などであれば、「俺を上座に座らせろ」などという上司は、私が見てきた中でも本当に数人で、基本的には周りが気を遣っておこなうことです。序列にこだわる会社には、何かと上の人をチヤホヤ気にする周りの人が必ずいます。



そういう会社は「統制が取れている」「組織的」という見方があるかもしれませんが、「保守的」で階層間の「コミュニケーション不全」に陥りやすい傾向があります。一方通行、意見が言えないといったことが起こるのです。

また、この手の会社は年長者が多くて決定権を持っているので、「自分たちの頃は」と古いやり方にこだわりがちで、新しいものはなかなか取り入れられません。そんな理不尽な現状維持バイアスは、他にも至るところに出てきます。



新型コロナ対応を機に、必要に迫られて使わざるを得なくなった「新しい」ツールをきっかけに、埋もれていた自分たちの「古い」価値観が、あらためて可視化されたという話が数多くあります。

この例では、リモート会議の質をどう担保するかというような本質的な話ではなく、「上司の画面上の配置」という優先度の低い話が前面に出てきたわけですが、これはまさに長年培ってきた社内の価値観、すなわち「社風」によるものです。「上をチヤホヤすることが善」という文化です。



こういう文化は、実は意外に簡単に変えられます。上の人が「無駄な気遣いは不要」と宣言するだけのことです。チヤホヤされてそれに乗っかる上司にも責任があります。

変化が激しい時代に、権威や上下関係にこだわる会社は、たぶん生き残れません。年令や役職に関わらず、質的により良い意見が取り上げられる組織であることが重要です。「上をチヤホヤする人たちがいる会社」では、その流れには乗れません。



良くないことばかりのコロナ禍ですが、やむを得ない変化のおかげで、あらためて見えてくることがあります。




2020年7月6日月曜日

「満足度向上」のその先のこと


最近は、「従業員満足度」を重視する会社が増えています。優秀な人材を確保するには「従業員満足度」を高めることが必須とされ、これが採用への好影響だけでなく、生産性や顧客サービスの向上、さらに業績向上につながるとされています。
「企業ビジョンへの共感」「マネジメントへの納得感」「仕事内容や会社の事業そのもの」「職場の人間関係」「職場環境の快適さ」などの項目で、従業員が満足できる状態が作られているかを、定量的な数値で表わす調査を定期的におこなって、その結果を様々な経営施策に活用している会社が多数あります。
この取り組みは私も重要なものだと思っていて、データ収集と活用を勧めています。

ただし、ある会社からこんな話を聞いたことがあります。
取り組みによって満足度の点数は上がっていきますが、継続すれば改善の余地が徐々に少なくなっていくので、それに合わせて点数の伸びも鈍化します。そのこと自体は普通ですが、以前よりも些細なことで不満の声があがりやすくなったように思うそうです。
一度「満足」してしまうと、それが普通で当たり前のこととなって、現状維持でも「不満」に思うなど、プラス効果がなくなった感じがすると言っていました。

このことについて、ある記事で「一度“満足”させてしまうと、その先の行動にはつながらない」というものを目にしたことがあります。「満足」とは、文字通り欲望や気持ちが満ち足りて心地よい状態で、その対象についてはゴールに到達したことです。それ以上のものはありません。
例えば、本当の意味での「顧客満足」に達してしまうと、顧客はそれ以上のものを求めなくなるので、売上などは頭打ちになります。「従業員満足」でも同じで、「不満」というのは「改善テーマ」でもあるので、改善されれば高評価につながりますが、本当に満足してしまっていたらすでに目標達成なので、それ以上の生産性向上や業績向上は難しくなります。
「満足させること」だけを目指しても、いずれ必ず行き詰まるのです。

これを「満足度」ではなく、「幸福度」として取り組もうという動きがあります。
「従業員満足度」が、どちらかといえば労働環境の充実度に偏りがちなのに対して、「従業員幸福度」は社員個人が仕事や会社に対してどのくらい幸福感を持っているかという感じ方なので、ここまでやればOKというゴールがありません。
計り方は難しいですが、定量化した客観的な数値だけでなく、インタビューなどの主観的指標も考慮してデータにします。「仕事はきつい、でも給料は高い」というような場合、単純に点数を合算しても、「社員が仕事内容をどう感じているか」という気持ちとはかけ離れてしまう可能性があるからです。
世の中に提供されている「従業員満足度調査」の中にも、この「幸福度」のような主観的要素を考慮しているものがあるようです。

これまで「働きやすさ」をいかに向上させるかという取り組みを続けてきて、これからは「やりがい」「働きがい」をどう高めていくかという取り組みにシフトするという会社があります。
「やりがい」や「働きがい」は個人の主観なので、総合的に高める方法はなかなか難しそうですが、私はこの取り組み自体はとても意義があることだと思います。

「満足」のその先にあるそれぞれの「幸福」などの感情のことも、続けて考えていかなければなりません。