2016年2月15日月曜日

「サッカー五輪代表」のシェフ帯同は、甘やかしでなく必須の環境作りだった



男子サッカーのU-23日本代表は、リオ五輪の出場を懸けたアジア最終予選で見事に出場権を獲得し、さらに優勝もしました。
サッカー好きの私としては、下馬評があまり高くないチームだったので、五輪出場が難しいのではないかと心配でしたが、結果重視のリアリティのサッカーで、試合内容としては多少面白味には欠ける印象だったものの、確実に結果を出したことはものすごく評価してよいのではないかと思います。

様々な取材記事やインタビュー記事で勝因の分析などがされていますが、強調されているのは、「スタッフまで含めたチーム全体の勝利だった」という話です。

特に緻密な選手の体調管理(コンディショニング)、相手チームの分析(スカウティング)などとともに、シェフを帯同しての食事に関することが、比較的大きく取り上げられていたと思います。
これまでは、五輪世代以下にはシェフの帯同がないのが通例で、そこには予算的な理由とともに、「厳しい環境でハングリー精神を養おう」という趣旨があったのだそうです。

今回のチームでも、食事のことでは実際に現地の物だけで取り組ませたこともあるようですが、監督は「今の平和な日本の恵まれた環境で育ってきた選手たちに、いきなり変な食事で“ハングリーになれ”と言っても、それは非現実的なこと」と考え、今回はシェフの帯同という形に踏み切ることになったのだそうです。

実は私も予選前にシェフ帯同の話を聞いて、甘やかしとかハングリーさの不足というような感覚を少し持っていましたが、この話を聞いてあらためて大事なことを気づかされた思いがしました。

まず、選手の精神面での成長というのは確かに必要なことですが、それはあくまで中長期的な課題であり、結果が出るまでには時間がかかることです。
今回は「五輪出場」という短期的な成果を確実に得ることが最大の目的であり、それがある限られた期間の取り組みに左右されるのだとすれば、その期間の中では、甘やかしだろうが何だろうが、環境面でできる限りのサポートをするということは、間違いなく正しい選択であると思います。その時その時の状況で移り変わる優先順位の判断を、的確に行っているという感じがしました。

これは、私たちが仕事をしている中でも、同じように時間軸を頭に置いて優先順位を考えなければならない場面は、小さなことや細かいことも含めて、実はかなり頻繁にあるのではないかと思います。そして、その優先順位の判断は、適切でないことも多いように感じます。

目先の売上を求めた強引な営業で顧客との関係が切れてしまったり、人材育成のためなどと言って目の前で品質低下を起こしたり、急ぎの仕事を非熟練者にやらせること、いつまでも芽が出ない種まき営業などは、適切に判断できていないことの一例だと思います。

人間の能力向上には時間が必要であり、時間がないのであれば環境や機器、設備といったもので支援するしかありません。ただ、これをバランスよく判断するのは意外に難しく、特に環境面での支援を強めようとすると、予算の問題や、これまではできていたからと言う前例の話、甘やかしや贅沢といった精神論などが出てきて、これに左右されがちになります。

サッカー五輪代表の取り組みを見ていて、環境面でメリハリをつけて支えるということは、ビジネスの中でももう少し考えていくべき課題ではないかと感じています。


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