2016年2月19日金曜日

「既得権」からいつの間にか離れられなくなるということ



ある社長のところに、かつて同僚として働いていた後輩が相談しに来たそうです。
年齢は50代後半になろうという人ですが、今いる会社で経営上の問題から組織変更が行われることとなり、その方には関連会社への転籍が打診されたそうです。今までとはまったくの別業種で仕事内容についても経験がなく、加えて勤務地はかなり遠くなり、さらに大きな問題は、給料が年収で100万以上下がるのだそうです。

ずるい退職勧奨ともとれますが、そんな経緯から旧知の人に助けを求めたようです。

ただ、この人が一番初めに言ったのは、「これまでの年収が○○万円だったので、最低でも××万円は欲しい」というお金の話だったそうです。
話を持ち掛けられた社長としては、「自分が入社すればこんなことができる」とか、「こんな経験が会社に活かせる」とか、実質的な貢献に関するアピールが欲しかったようですが、そういうことはまったくなかったそうで、ただ一方的に自分の都合ばかりを話されたそうです。
その後いろいろお話をしたものの、結果として入社は断ることにしたそうです。

この社長はとても人情に厚い、どちらかと言えば感情に流されてしまうウエットな人ですが、そういう人が断るということは、よほどの思いがあったという気がします。後から気持ちを聞いてみたところでは一言、「自分の市場価値を知らないままで一方的な主張をするので、もし受け入れても不満しか持たないと思ったから」ということでした。

これと同じような話は、特に大企業出身のシニア人材が、中小企業に転職しようというようなときにも、よく耳にすることです。

自分が何ができるかという話はそこそこに、給与や待遇の話に終始し、結果的には折り合いません。やはり大企業では並みの給料でも、同じものを中小企業で実現することは難しいということですし、仕事とペイのバランスが合わないように見えてしまうということです。

ここでできる認識ギャップは、結局はその人の市場価値に関する認識ギャップですが、自分から転職でも考えない限り、このことを的確に理解している人は意外に少ないと感じます。
自分が今まで受けていた処遇は、世間一般のものとして当然であり、それは既得権として前提にあるという感じです。ただ、自分の価値を高める努力もせず、結果も出ていなければ、残念ながらそれは無理な相談です。

今自分の身の回りにある環境、処遇というのは、それがいつの間にか既得権となり、当たり前の離れられないものとなってしまいます。でもそれは、自分が望んでのことか、もしくそうでないかにかかわらず、環境が変われば同じように変わっていきます。

実力が認められたスポーツ選手でさえも、チームを変わったとたんに試合に出られなくなったりします。ここに既得権というものは存在しませんが、なぜかサラリーマンは既得権があるものという行動をとりがちです。
しっかりと意識を持っていないと、既得権からいつの間にか離れられなくなってしまうということ、その既得権は環境が変われば存在しえないということは、心に留めておく必要があると思います。


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