2014年1月29日水曜日

「とりあえずみんなで話そう」と言う部長


部下の意見を良く聴く上司であれば、その人のことを悪く言うことはあまりないと思います。上司が自分の意見に耳を傾けてくれて、それを少しでも取り入れてくれれば、部下としてもうれしいことだと思います。

ただ、ある会社でこんなことがありました。
その部長さんは、一見すると穏やかで、部下の意見を良く聴く面倒見の良さそうな人ですが、部下たちの評判はいまいちパッとしません。なぜかと尋ねてみると、部下たちは口々に「部長は自分では何も決めようとしない」と言います。

どうも、どんな小さなことであっても、とにかく何でもかんでも「とりあえずみんなで話そう」と言って部下たちを集めるのだそうです。
その話し合いの場では、部下から出てくる提案にはいろいろ意見をするが、決して自分の考えを言わないのだそうです。しいて言えば議長のような役目でしょうか。

こういうやり方をすれば当然ですが、何か物事を決めるのにものすごく時間がかかります。部門全員に関わるような重要な決定事項ならばともかく、部長が「こう決めた」と言えばそれはそれで良いようなことでも、すぐに「とりあえずみんなで・・・」と集合がかかるのだそうです。

実はこの部長さんに、ちょっとお話をうかがってみました。もしかしたら部下の当事者意識や考える力を養うため、納得性を高めるためなど、部下育成やその他の意図があってのことかもしれないと思ったからです。
その結果は、残念ながらまったくと言ってよいほどそういう部分はお持ちではありませんでした。会社に対して多少考えていることはあるものの、ご自分の意見というよりは会社の上層部の方々がおっしゃっていたことがほぼそのままです。

会社の様々な課題についても、「こうしよう」「こうしたい」というアイデアはあまりお持ちではありません。どうも会社から降りてくるテーマを、ほぼそのままスルーして自分の部下たちを巻き込み、どうすれば良いかを同じ思考レベルで考えていたようでした。

たぶん周りから見ると、その部長は「部下の意見を良く聴く面倒見の良い部長」に見えるのでしょうが、実態をはっきり言ってしまうと「マネジメント能力を持ち合わせていない部長」ということになってしまいます。リーダーシップを発揮している訳ではないし、自分の意見もあまりない。それを補完するために、ただ話し合いの集合を声掛けしているだけということです。

この部長さんはその後、自分なりの気づきもあって努力もされ、徐々に本来の意味での部門マネジメントに、能力を発揮できるようになっていきました。
基本的なリーダー素養はあったにもかかわらず、どうも「自分が決める」ということを、一方的な押し付けのようにとらえ、あまり良いイメージで思っていなかったことが一番の原因だったようです。そんな中で、自分の意見を持たないという状態が、知らず知らずのうちに助長してしまっていたようでした。

部下の意見を良く聴くことは大切ですが、決断にはスピードも必要ですし、場面によっては上司が自分の意見で部下を引っ張っていくということも必要です。

もしもノープランのままで「とりあえずみんなで話そう」と言っていることが頻繁にある人は、ちょっと注意する必要があるのではないかと思います。


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