2015年5月1日金曜日

「仕事ができない上司」を支えようとする部下に、会社は甘えてはいけない


あるアンケート調査で、20~30代の会社員の男女各100人に、「上司」に対するスタンスについて聞いたところ、「優しいけど仕事のできない上司」「冷たいけど仕事のできる上司」のどちらのタイプがよいかという質問では、68%の人が「冷たいけど仕事のできる上司」の方がいいと答えたそうです。

しかし、「優しいけど仕事のできない上司の部下になってしまった場合、どんな接し方をするか?」という問いには、「なんとかして上司を支える」と答えたのが74%。「なんとかして上司を追い落とす」という答えが26%で、部下の4人に3人は「支える」と答えたとのことでした。
なんだかんだ言ってもやさしい部下が多いというコメントがされていましたが、ここには意外に大きな問題をはらんでいると思います。

これを組織上の課題としてみれば、「仕事ができない上司」は、組織上の責任や権限を持つ者の能力が足りないということなので、仕事上の悪影響は、“できない部下”よりも圧倒的に大きいはずです。本来であれば、一刻も早くその職責から外して、他のより良い人材に任せるべきですが、実際にそうなることは、特に一般的な日本企業では多くありません。

“代わりになる人材がいない”、“解雇できないから、だましだましでも使わなければならない”など、理由はいろいろありますが、私が見ている中で思うのは、実は会社側が、その上司にそれほど問題があるという状況を、把握できていないことがかなり多いということです。

その最も大きな理由は、その上司の無能さを部下たちがフォローしているおかげで、上司自身に由来する問題が、あまり露骨に発覚しないで済んでしまっているということがあります。現場からの不満の声があまりなく、部門の業績数字がそこそこであったりすれば、まさにこの状況になります。

組織でお互いをカバーし合っているということでは望ましい姿ですが、出ている結果は平均的だとしても、上司のマイナスを部下がカバーして、何とか持ち直したのかもしれませんし、本当はもっと伸ばせる余地があったのかもしれません。結果の中身をよく見なければ、どんな状況から得られたものなのかがわかりません。

「仕事ができない上司」をフォローしようと考える部下が多いことは、組織を構成するメンバーの関係性としては良いことだと思います。私自身も、顧客先の一般社員に向けて、フォロワーシップやアサーションなど、前向きに上司をフォローするような考え方の研修をします。

ただ、この部下たちのフォローに甘えていると、「仕事のできない上司」が、実際にはどんな状況で何ができていないのか、どんな悪影響が出ているのかといったことが、周りからは見えなくなってしまいます。

上司を管理する上席者は、現場の細かな状況には介在しないでしょうし、その「仕事ができない上司」からの報告と、結果として見える数字で状況把握をしていることが多いでしょう。でも、これだけで本当の状況はわかりません。

上司の無能さを部下の立場から発言することも、これを上司批判、他責、後ろ向きな態度などと評価される恐れがあるので、簡単に言い出せるものではありません。

「仕事ができない上司」を、部下たちが前向きにとらえてフォローしようとすればするほど、本質的な問題は潜在化していきます。そうならないためには、その「仕事ができない上司」の仕事ぶりを、さらに上の立場の者がきちんと把握している必要があります。
会社として、その上司の状況をある程度把握していて、会社側から状況確認を働きかけることができなければ、具体的な情報は上がってきません。

 ダメな上司を支えようとする部下に甘えていると、組織の問題がどんどん見えなくなってしまうと思います。


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