2016年7月11日月曜日

「失敗からでは学べない」とおっしゃった社長たちの話



最近、「失敗から学ぶ」といったたぐいのビジネス本や自己啓発本が、数多く目につく気がします。
テレビ番組でも、出演者の失敗経験を題材に学びを得ようというようなものもありますし、「失敗学」なる学問も存在するようです。

私も失敗経験から学べることはあると思いますし、それを活かすことができた経験もありますから、失敗することにも意味はあると思っていますが、以前からお付き合いがある社長の何人かは、異口同音に「失敗からでは学べない」とおっしゃっていました。

「そもそも経営が失敗したら、その次があるかどうかもわからないから、絶対に失敗などはできないし、だから事業は一時的な欲をかかずに、手堅く進めなければならない」とおっしゃいます。この社長たちが手がけている事業は、確かに大儲けにはならなくても、すべてきちんと収益を上げて成功しています。

私は以前、仮に誰かを育成する上で、失敗から学ぶことが大事だとしても、実際にそれをさせることはすごく難しいという話を書いたことがあります。
そもそも、どんな仕事でも失敗して良い仕事はないですし、意図的に失敗させるようなことはなかなかできません。たまたま失敗が発生して、それが大事にならないように火消しをして、その上でフィードバックをして考えさせるということはできますが、そんなに都合よく、ほどほどのレベルで失敗するようなことはほとんどありません。

さらに、回復可能な失敗であれば、そこから学んで次に活かすことはできますが、組織上の立場が上になればなるほど、一つの失敗が命取りになります。

「失敗を活かす」と言っている話の中身を見ていると、研究開発のように試行錯誤が前提となっている分野であったり、失敗から切り替える心の持ち方の話や失敗の受け止め方といった、どちらかといえばメンタルのコントロールに関する話だったり、少し偏りがあるようにも感じられます。

中には「失敗したって仕方がない」「別にいいんだ」という開き直りのような話もあるので、そうなってくると、学びになるからと言って失敗しないための努力はしないかのような矛盾した話になってきて、本来あるべき「いかにして失敗を避けるか」ということが、軽く扱われているような傾向を感じてしまいます。

「失敗から学ぶ」を称賛するような最近の傾向は、ともすれば失敗に対して甘く考えがちな風潮につながっている感じもします。
社長たちがおっしゃる「絶対に失敗してはいけない」「失敗からでは学べない」という言葉も、本来あるべき姿として、しっかりとらえておく必要があるのではないかと思いました。


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