2020年6月15日月曜日

「仕事振りが見えないと評価できない」は本当にそうか?


新型コロナをきっかけにしてリモートワークの機会が増え、様々な変化が起こっています。
よく聞くのは「評価するのが難しくなった」という話です。今まではお互いが直接顔を合わせて仕事をしていたので、仕事振りやプロセスが常に見えていたものが、リモートになってそれが見えなくなったからだといいます。

「より成果主義、個人主義を強めなければならない」
「会社基準の“メンバーシップ型雇用”から、仕事基準の“ジョブ型雇用”に変わらなければならない」
「今までの評価制度は見直しが必要だ」
といった声がありますが、これらはどれもその通りだと思います。
大きな方向性として、企業と働き手の関係性は、これまでのような画一的、ヒエラルキー、強制と依存のようなものから、個別、対等、専門的といったものに、間違いなく大きく変わっていきます。

ただ、この「仕事振りが見えないと評価できない」というのは、本当に制度や仕組みの問題なのかといえば、その点には疑問があります。

例えば、評価制度で「取り組み姿勢」「やる気」「責任感」など、仕事振りの観察が必要な情意評価といわれる項目は、主観に左右されやすいことから、最近はほとんど見かけません。あったとしても、評価の中での重みはごく一部にとどまります。

また、「仕事のプロセスが見えない」といっても、それは仕事の進捗をその時点までの結果で見ているはずで、別に逐一観察していないはずです。
確かにリモートでは、仕事中にサボっていてもわかりませんし注意もできませんが、それでは結果も出ないので、良い評価ができる訳はありませんし、たぶんサボっていたであろうこともわかります。

さらに、職種によってはほぼ外回り、客先常駐など、ずっと目の前にいて仕事をしない人がいますが、そういう人でも今まで評価してきたはずです。こちらも、ほとんどの仕事は、その進み具合やでき具合を「結果」として見てきたはずで、それは別に仕事振りがわからなくても、十分見ることができます。

例えば他部門と一緒に仕事をしたり、協力会社に依頼したりというときは、必ず要件や期限、品質基準などを明確にした上で行ない、途中経過や結果は確認しても、仕事振りは関係ありません。
なのに、自分の部下を評価するとなると、急に「仕事振り」となるのは、業務指示を適当にしているために、常にプロセスを見張らないといけないなど、マネジメントの問題が大きいです。
「何か困っていないか」「悩んで手が止まっていないか」「サボっていないか」などというのは、確かに仕事振りを見ていないとわかりづらいですが、リモートでも確認するすべはありますし、そもそも評価とはあまり関係がないことです。

企業人事を取り巻く環境は、これから大きく変わり、それに合わせて考えなければならないテーマは非常にたくさんありますが、リモートワークで「仕事振りが見えないと評価できない」という話は、どちらかといえばマネージャーの不安や疑心暗鬼の問題です。
「結果を見て評価する」ということは、今までもやってきたはずなのに、急激な変化に対応しきれていないだけのように思えます。

そもそも、目の前で見ているから、みんな集中して仕事をしているかというと、決してそんなことはありません。もしかすると、「仕事をしているふり」のうまい人に騙されているかもしれません。
反対に、リモートで見られていないからと、おおっぴらにサボる人はいるでしょうが、それは必ず仕事の結果に表れます。仮にサボっていても結果が出ているのであれば特に問題はありませんし、今回リモートになって、「仕事をしているふり」があぶり出されたという面もあります。

「仕事振りが見えないと評価できない」という話は、マネージャーの頭の切り替えの問題の方が大きいように思います。ただし、環境がいろいろ変わってきていることは間違いありません。

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