2023年5月15日月曜日

効率ばかりでない「適切な余裕」の大切さ

 ここ最近、いくつかの会社で組織課題を見つける一環として、それぞれの社員を対象にしたヒアリングをおこなっています。

意図としては、第三者の社外専門家が客観的な立場で話を聞くことで、潜在化している課題が明らかにしたいということですが、どの会社でも一方的な不平や不満が言われることは一切なく、非常に真面目で建設的な話がされています。

 

ただし、それぞれが部下や周りとの接し方、マネジメントのしかたやスキルアップのしかたなど、悩みや迷い、その他課題を抱えています。私からはできる限りのアドバイスをして、それが効果的なこともそうでないこともありますが、そういうコミュニケーションの場を肯定的にとらえてくれる人が多いのは有難いことです。

 

そんな中で出てくる課題として多いのは、「余裕がない」「時間がない」という話です。中小規模の企業ということもありますが、一人の社員が担当する業務範囲が広く、なおかつ自分の代わりの人材はいないことも多く、結局その人の責任感だけで業務遂行が保たれていることも少なくありません。

「休暇が取れない」「ストレスが大きい」といった話につながっていることが多く、「相談する人がいない」といった問題もよく耳にします。

ただし上司や他の社員などとコミュニケーションを取りづらいなどということはあまりなく、話せばみんな親身になって対応してくれようとはするものの、他の人では自分の仕事をあまり理解できなかったり、人員に余裕がないので結局何も解決しなかったりするようです。

 

以前出会ったある会社の社長は、多少収益を圧迫したとしても、人員数や業務量などを調整して、マンパワーの余裕を10%程度持つことを常に考えていたと言っていました。理由は、何か突発事情や緊急事態が起こったときに、対応できなくなってしまうからだそうです。

 

生活用品の企画、製造、販売を行うアイリスオーヤマでは、あらゆる設備の稼働率7割以下にとどめていて、例えば工場の稼働スペースが7割を超えたら、増床するか新たな工場を建てるかという対応をするそうです。

具体的な需要があるわけではないので、当面はただの予備スペースとなりますが、急に何かの需要があったとき、その予備ですぐ生産開始できるなど、需要変動に対する対応力が高くなるからだといいます。

1~2割増し程度の急な出荷増には対応できたとしても、5割を増すような注文には、同社のように事前の体制がなければ対応することはできず、コロナ禍で世の中が急激なマスク不足に陥った時、同社がすぐにマスク増産に対応できたのは、こんな理由があったそうです。

昨今で、景気動向に関わらずに業績を伸ばしている企業では、設備稼働率に余裕を持たせる経営を行っている会社が少なくないそうで、これは中小企業であっても同様だといいます。

 

「適切な余裕」を見込んだ組織運営は、これから重要な経営課題になっていくのではないでしょうか。

 

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