2021年9月2日木曜日

「質問」や「確認」が遅いと言われる部下が思っていたこと

ある会社のマネージャーが、自身の部下に対してこんなことを言っていました。

「わからないことは質問しに来いと言っているのに全然してこない」

「必要な確認をしてくるのが遅い」

とのことです。

そのせいで作業が手戻りで遅れてしまったり、トラブルになってしまったりということがあるそうです。

 

マネージャーは「早めに質問や確認してくれればいくらでも対応できるのに、積極的にコミュニケーションを取ろうとしないので困る」と言っています。部下がきちんとアクションしてくれれば、避けられるトラブルがたくさんあるのは確かなのでしょう。

 

一方、そういう指摘をされる部下に話を聞くと、こんなことが出てきます。

「マネージャーはいつも忙しそうでなかなか話しかけづらいし、自分のことで安易に時間を奪うのは失礼だと思う」

「質問しても、まず自分で考えろと言われることも多いので、自分でできるだけ調べて確認して、質問するのはそれからだと思った」

と言っています。

 

こちらも決して間違った行動とはいえません。マネージャーが言うように、「部下は自分から積極的に、自律的に行動すべき」というのは、間違いなく正論であり、仕事を円滑に進めるためには必要な行動と言えますが、部下が思っている「自分のことはできるだけ自分で解決する」「上司の時間を安易に奪わない」という気遣いにも同じことが言えます。何でもいちいち聞いてくる部下、相手の事情を気にしない部下では、マネージャーはかえって困ることが多いでしょう。

 

こういったお互いの食い違いは、仕事の中ではいろいろな場面で起こっています。そしてこの食い違いのほとんどで、部下が一方的にマネージャーの感覚に合わせようと努力することで、解決しようとします。

ただ、もしここで、マネージャーの側から質問を求めたり確認をしたりというアクションを取っていたとしたら、この食い違いは少し軽減されたはずです。

また、部下の立場に立って考えれば、上司からの「自分で考えろ」と「早く質問、確認をしろ」というそれぞれの指示は矛盾したものです。自分で考えることを優先すれば時間がかかりますし、早い確認を優先すれば自分で考えることはおろそかになります。混乱してしまうのは仕方がないでしょう。

 

食い違いというのはお互いの認識違いであり、そのギャップを埋めるためにはコミュニケーションを取って認識を合わせるしかありません。その際はどちらか片方が相手に合わせるのではなく、お互いが歩み寄る方がギャップを埋めるには効果的です。

どちらか一方だけに問題がある状況は確かにありますが、この例のように、どちらも決して間違っているとはいえない食い違いという状況もあります。

 

どちらも悪くない、お互いが良かれと思った行動にもかかわらず、それぞれの意識に食い違いが生じていることがあります。そこではお互いがそれぞれの認識を確認しながら、それぞれが歩み寄ることを考えなければなりません。

 

どちらかだけに一方的な問題があるという状況は、意外に多くは無い気がします。

 

 

2021年8月30日月曜日

「若者は・・・」の思い込み

東京都が始めた若者向け予約なしワクチン接種に希望者が殺到して、いろいろ収拾がつかなくなった話題がありました。結局抽選制になり、それも現地に行って券をもらうアナログな方法ということで、いろいろ批判的な意見があるようです。

準備不足は大目に見たとして、関係者が「若者は希望者が少ないと思っていたので想定外」と言っているのを聞いて、それはさすがに状況把握がずれ過ぎていると思います。

 

普通に公表されているデータを見れば、確かに年齢が下がるほど希望者の比率は減りますが、それでもはっきり「希望しない」と答えているのは2割くらい、次の2割は「まだわからない」となっています。それは残りの6割は希望しているということであり、「想定外に希望者が多かった」などというのは、「若者の接種意向は少ない」と勝手に思い込んでいただけでしょう。

きちんと調査するなり、それができなくても身近な若者に意見を聞くくらいで十分に状況はわかったはずです。そんな思い込みで重要なことが動き始めてしまうのはかなり危うさを感じます。

 

この「若者は…」の思い込みは、私の年齢でいうのも説得力に欠けますが、気になることがずいぶんたくさんあります。

例えば、最近の若者は「物欲がない」「購買意欲がない」と言います。車を買う若者がどんどん少なくなっていることなどと結びつけて言いますが、そういうデータは確かにあるものの、だから購買意欲がないと言い切ることはできません。

車に興味のない人が多いのはそうかもしれませんが、例えばかなり高級な自転車を持っていたり、洋服をたくさん持っていたり、釣り、アウトドア、その他趣味のグッズを取り揃えていたりします。自分が興味のない物、不要と思う物に無駄な支出はしませんが、自分の好きな物や必要だと思った物には、結構思い切ってお金を使う人が大勢います。これは物欲や購買意欲はあるが、自分が無駄だと思う物には手を出さないというだけに過ぎません。

こうやって見れば、「今どきの若者は物を買わない」というのは、他の世代が一部の人を取り上げて勝手に思い込んでいるだけに過ぎないことがわかります。

 

例えば、最近の若者は「あまりお酒を飲まない」などと言われ、確かに全体販売量のようなデータを見れば、そういう傾向はあるのかもしれません。ただ、私の周りで見ていると、一滴も飲まないという人は少数で、状況に応じてそれなりにたしなんでいる人がほとんどです。

「お酒が好き」「飲み会が好き」という若者は大勢いますが、つぶれるまで飲むようなことは確かに少ないようですし、職場関係のようなあまり親しくない人と一緒に行くのは好まないところがあります。ただ、そのことだけで「若者はお酒を飲まない」と言い切るのは、同じく思い込みに過ぎません。

 

こういう思い込みが増えるのは、主に上の世代が自分たちが同年代だったころと比べて、違うと感じたところばかりを象徴的に言うからです。あくまで私が感じることで、今の若者世代と以前の違いを挙げるとすれば、志向が多様化して何に関しても一概に言い切ることがしにくくなったことがあります。

車や飲み会よりも優先したいことが人それぞれでたくさんあって、ある一つの切り口だけをとらえて論評しても、それが全体傾向にはつながらないことが多いです。逆に若者の中でも車好きや酒好きは大勢いて、その人たちだけに注目すれば「あまり昔と変わらない」となりますが、そのとらえ方も同じく全体傾向とはつながりません。

 

特に若い世代では志向や価値観が多様化しており、ステレオタイプに「○○は○○だ」などと言い切ることは難しくなっています。

型にはめた思い込みで決めつけず、客観的な情報で実態を把握することが、まずます重要になっています。

 

 

2021年8月26日木曜日

「指示待ち」「受け身」には理由がある

いろいろな会社で、主に自分の部下や若手社員の「指示待ち」が問題視されます。

「言われなければ動かない」「自発的な行動がない」「仕事への姿勢がすべて受け身」など、指摘されることはどこもほとんど同じです。

特にやり玉に挙がりやすいのは新卒の新入社員です。「やる気が見えない」「積極性がない」など、こちらも言われるのは似たようなことです。

 

ただ、新入社員のことでいえば、彼らは社会人としても社員としても、何の経験もない初心者中の初心者です。その人たちにいったいどんな行動を求めているのでしょうか。

「言われなければ動かない」の反対で、求められているのは「言われなくても動く」ですが、もし言われていないことを自己判断でどんどん行動されたとしたら、上司はたぶんかなり困るはずです。「言われなくても」と「動く」の間には、「こちらの意図通りに」という言葉が入りますが、ここにはそれなりの経験が必要です。

 

もう一つ「言われなければ動かない」の反対としては、「言われれば動く」となります。指示されてその通り行動するのであれば、そのことに何の問題もありません。「動かない」ではなく「動“け”ない」ことも考えられますが、その理由の一つは「指示がないから」、もしくは「指示の意味が理解できないから」です。そうなると、責任の一端は上司にあります。

 

「動“け”ない」という理由は他にも考えられます。多いように感じるのは、やはり「失敗を恐れる」ということです。本人は無意識のまま本能的にそういう行動をとっていることもあります。

「失敗を恐れる」のは、必ずしも自分の身を守りたいばかりではありません。「周りの人に迷惑をかけてはいけない」、だから「失敗してはいけない」と思っている人がたくさんいます。真面目な人が多いのか、自分のミスで他人の時間を奪ったりすることを、とにかく避けたがるところがあります。

 

自分だけが突出することを好まないため、みんなに指示されるまであえて待っているようなこともあります。周りとの関係に気を遣っているのです。

 

「受け身」「指示待ち」を批判的に言う人たちも、経験が浅い若手の頃は、同じように叱責された経験がある人は大勢いるのではないでしょうか?

その時はただ手抜きやサボりの気持ちで指示を待っていたのでしょうか?

 

もちろん中には「指示された方が楽」「言われた以外の余計なことはやりたくない」など、仕事への取り組み姿勢が好ましくない人もいるでしょう。しかし、それ以外の多くの人は、「受け身」「指示待ち」になってしまう理由が何かあり、必ずしも本人の姿勢に問題があることばかりではありません。

 

人が「指示待ち」に陥ってしまうのは、何か必ず理由があります。それをきちんと見極めて一緒に取り除いていかなければ、本当の解決にはつながりません。