2013年8月10日土曜日

「能力不足」か「度量不足」か


「アイツは能力が低い」「仕事ができない」というような言い方で、自分以外の他の社員の「能力不足」を批判する声というのは、程度の違いはあってもほぼすべての企業で聞かれるものです。この指摘がすべて間違っているわけではないと思いますが、私は一方で「度量不足」を感じることが良くあります。

“度量”とは、辞書によれば「他人の言行をよく受けいれる、広くおおらかな心」とあり、同じような意味の言葉として、“器の大きさ”“寛大さ”“ 寛容性”“ 包容力”“心の広さ”“慈悲深さ”“懐の深さ”などが出てきます。
要はその「能力不足」の人に対する、仕事を与える側、指導する側、雇っている側の姿勢や態度にも問題があるのではないかということです。

確かに今のビジネスの世界では、スピードは早いし結果もシビアに問われますから、やむを得ない面はありますが、大して教えもせず、フォローもフィードバックもせず、自力で出来ないから「能力不足」だといい、すぐに「使えないから辞めさせろ」などと言います。あまりにも見切りが早く無責任な気がします。

また、そういう言い方をする人は、おおむね「自分はできている」という自負を持っています。しかし第三者として客観的に見ると、ある一面ではそうであっても、できていないことはまだまだたくさんあることが多いです。たまたま顕在化したところはできていたというだけで、それをよりどころにして他者攻撃をしているだけです。自分のことを謙虚に客観視することはできていません。

人によって「能力不足」は確かにあるし、本人が自覚して努力、克服することが最も必要ではありますが、会社にもその人を採用した責任があります。能力の見込み違いは自分たちのせいであり、成長速度が遅いのは周りの指導に問題があるかもしれません。成果を出しづらい仕事を与えているかもしれません。これを棚に上げて排除しようとするのは、やっぱり「度量不足」と言わざるを得ません。

「度量不足」「能力不足」の陰に隠れてしまいがちですが、ほぼ同列にあるものです。これを自覚できないと、他者攻撃をして人の見切りが早い風土がどんどん定着していきます。そして組織の中での他者攻撃は、確実に業績の足を引っ張ります。もしも自社に気になる点があるならば、一度じっくり見なおして頂ければと思います。


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