2014年12月8日月曜日

「他社事例の活用」を成功させるための一つのこと


私たちのようなコンサルタントの立場では、課題に関連する他社での成功・失敗事例の情報提供を、クライアントから求められることが良くあります。

他社事例というのは、その会社でうまくいったからと言って、これを別の会社に持ち込んだとしても、必ずしも成功確率が高いとは言えない面がありますし、逆に他社での失敗事例がそのまま当てはまるとも限りません。
ですから私たちは、その会社の様々な事情を総合的に見極めるとともに、その会社で活用できそうな他社事例を、複合的に組み合わせながら選択肢を示していこうとします。そうでなければ成功が見込めないことがわかっているからです。

しかしクライアントの中には、「もっと直接的に持ち込める事例を!」と要望をする会社がありますし、コンサルタントの中では、提案という名のもとに、その根拠が薄くても「この事例が有効である」などと言い切ってしまう人もいます。実務経験が少ない人には、この手の傾向が出がちでもあるので、注意する必要があります。

企業の採用活動においても、他社の有効な事例を持ち込みたいということで、大手企業や自社より大きい他社の役員や管理職経験者などに、このあたりの期待をして採用をすることがあります。
これも、その後の現場の様子を見ていると、うまくいっている場合と必ずしもうまくいっていない場合の両方がありますが、この成否に影響する大きな要素が一つあります。

それは、採用された人材のご本人が、その会社の現状を受け入れて肯定的に見ているか、元の所属会社と比較して否定的に見ているかということです。

想像がつくと思いますが、うまくいっているのは前者の「現状肯定派」です。現状が好ましい状態でないとしても、そこには過去から積み上がった何らかの経緯や事情があります。これを受け入れた上で、ご本人の経験や知識を加えていくことができると、状況は非常にうまく回り始めます。

しかし、このような対応が取れる人は実際には少数で、人数としては後者の「現状否定派」が圧倒的に多いです。
「こういう仕組みがないのはおかしい」「こういうマニュアルや資料がなぜ無いのか」など、前職と比較してのダメだし発言が多く、「○○社では・・・」と言いながら元の会社の話をします。
何かにつけて他者の例を引き合いに出して語る人を、「ではのかみ」などと揶揄する言葉があるようですが、ご本人は無意識であっても、この行動パターンの人が多いと感じます。

この手の人材が組織に入ってくると、会社の状況は二通りに分かれます。
その人の行動や言動が周りから総スカンとなり、結局は本人が辞めてしまうことになるか、現場のモチベーション低下を引き起こしながら居続けるかのいずれかです。
前者は組織改革に関して保守的な傾向が強まり、後者は軋轢が深まり、現場での会社不満が増長します。どちらも良い状況ではありません。

自社の課題解決に向けて、他社事例を参考にすることは、それなりに有用なことです。ただ、そのためには綿密な現状把握が必須であり、それを理解した上で対策立てて実行できる人材でなければ、他社事例を活用することは難しくなります。

問題の答えというのは、そうそう簡単に見つかるものではありません。


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