2016年3月9日水曜日

「相手の立場」を体験すると気持ちがわかる

ある自動車販売会社の話ですが、ここでは新入社員や若手社員を中心に、必ず保育園に5日間の研修に行かせるのだそうです。やることは座学ではなく、研修の間ひたすら保育士さんたちの補助として、ずっと子供たちの相手をするのだそうです。

自動車販売会社というのは、子供連れの顧客との商談が多く、子供が騒いで商談がままならないこともしばしばあるので、子供との接し方を学べばこの対応に活かせるのではないかということが、そもそも始めたきっかけだそうです。

実際に研修に行かされる社員の中には、何でこんなことをさせられるのかと不満そうな者もいるそうですが、子供というのは正直なので、そんな心理を見透かしてしまうのか、子供からの人気不人気が、社員によってはっきり差が出てしまうのだそうです。
子供たちは、初対面では距離をとっていても、そのうち子供同士で社員の取り合いをはじめたりして、社員たちもそれぞれそんな様子を見ながら、自分なりに子供たちとの接し方のコツを徐々に体得し、みんな子供たちと仲良くなっていくそうです。

最後は子供たちと涙の別れになったりするようですが、この経験をすることで、社内での家族連れやお子様対応にも、様々な工夫ができるようになっていったそうです。

このような、「相手の立場」を体験させるような仕掛けは、世の中には結構いろいろあり、例えば身に着けると男性でも妊婦の生活が体験できる“妊婦ジャケット”や、疑似体験装具をつけることで、加齢による身体的な変化(筋力、視力、聴力などの低下)のような、高齢者の日常行動を体験できるといったものがあります。

相手の立場を知っているということでは、サービス業の経験者は店員さんに優しかったり、学生さんがアルバイトなどを通じて働いている側の苦労がわかったりします。
自分の視野を広げるためにも、相手の立場を知るということは大切だと思います。

ただ、こういうことを企業研修としてやっているケースは、意外に少ないように思います。しいて言えば、顧客と自分たちとの置き換えはあっても、社内で別の立場を経験するようなことは、たぶんほとんどないでしょう。異動や配置転換は普通にあるでしょうが、それを研修の一環としてやっている会社は、もしあったとしてもごく少数で、日数も1日程度のごく限られたものだろうと思います。

例えば、1~2週間くらいの期間で、営業担当が工場のラインに入る、エンジニアが経理部門に行く、などということも、視野を広げるためにはあっても良いように思います。
さらに、課長や部長といった管理職、場合によっては経営者も、ある部門の一般社員として、他人の指示命令を受けながら働くなどという、階層の入れ替えも面白いかもしれません。
ほとんどの管理職は一般社員の経験があるはずですが、管理職経験が長くなると、意外にそのことを忘れてしまっているものです。

「相手の立場」を体験するという機会は、いろいろな組み合わせで多くの形を用意してみると、意外に効果があるのではないでしょうか。


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