2019年4月15日月曜日

「失敗」「挫折」の体験は成長に必須のものか?


ある会社の採用面接で、その人の「失敗体験」を質問していました。
それを聞く大きな理由は、どんなレベルの経験を失敗と捉えるのか、それをどう克服したのかを知ることで、その人の考え方や姿勢、努力の可否や成長余地が知りたいということでしょう。
採用面接の質問としてはわりと一般的で、私も面接官になったときには、こういった質問をすることがありますし、聞きたい理由も同じようなことです。

ただ、私自身に対して「失敗」や「挫折」の経験を聞かれると、実ははっきりと答えられるものがありません。
「失敗」と言われて、しいて思いつくのは「寝坊した」「遅刻した」程度のもので、それ以外であまり記憶に残っているものはありません。
もちろん仕事上のミスなどはありますが、その影響を最小限にするようにリカバリーをしますし、そもそも失敗は嫌なので、それができる限り起こらないように準備も注意もします。そこまでどうしようもない「失敗」は、自覚したことがありません。

「挫折」については、たぶん性格的なものもあり、できないことができるようにする努力は必要と思うものの、ある時点での自分の力量は決まっているので、その時にできないものはできないと割り切っているところがあります。計画していることがうまくいかなくても、どこかでそれを想定していますし、できないものはできないので、それを他人と比較して落ち込むこともありません。
他の人だったら「挫折」を感じることも、そう思わないくらい鈍感なのか、それとも本当に「挫折」の経験がないのか、どちらなのかはよくわかりません。

よく「失敗」「挫折」の体験が人を成長させるといいます。嫌な経験はもう二度としたくないと思って、その経験を活かして対応しますから、成長につながるのは確かだと思います。
ただ、実際の人材育成にそれを取り入れようとすると、なかなか難しいところがあります。「失敗」や「挫折」は、起こるかどうかやその程度がコントロールできないからです。
新入社員レベルで、ごく限られた範囲の仕事をしているうちであれば、まだ可能かもしれませんが、本人が「失敗」だと自覚して反省し、しかしその「失敗」は大きな影響がなく回復できるような、育成に利用できる「失敗」は、そんなに都合よく起こりません。
「挫折」も、他人がさせようとしてできるものではありません。

そもそも人材育成というのは、より効率的で成功しやすい方法、失敗しづらい方法を学ばせている訳です。もしも「失敗」や「挫折」が成長につながるのなら、一般的な人材育成では、成長をジャマする教え方をしていることになります。

「失敗」「挫折」が人を成長させるのは確かだとして、それはあくまで本人が感じる主観によるものです。人生の転機になったなどと言い、そういう経験が重要だと言う人はたくさんいますが、感じ方は個人によって違いますし、そこからくみ取るものも違います。何かを学びがあった、意味があったと位置づけることで、過去の悪い記憶を断ち切ろうという心理もあるでしょう。

私は「失敗」「挫折」の体験は、運悪く遭遇してしまったら、その経験を“自分なりに”将来に活かすだけのもので、万人の成長に必須ではないと思っています。その人の経験談として伝える以外は人材育成に使いづらく、同じ対応が必ずしも同じ結果につながる再現性もありません。
「失敗」「挫折」の体験は、あればそれを自分なりに活かし、なくて済んでいるならそれに越したことはないものだと思います。


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