2019年10月3日木曜日

自由な「内定式」は本当に効果的なのか


10月1日は、来春入社の新入社員の「内定式」が、多くの会社で行われます。
やり方もどんどん多様化していて、あえて特定の場所に集めず、オンラインで説明や質問のやり取りをしたり、通年採用で動いているために実施辞退を見送ったりする会社もあります。

その一方で、「自由な髪形」で参加するように促した会社が話題になりました。あるヘアケアブランドのキャンペーンに、多くの会社が賛同したとのことです。
茶髪や巻き髪など、内定者は思い思いの髪形で参加し、内定者は「個性を生かせ、自由な雰囲気で仕事ができそう」「本当の自分の姿を知ってもらうのに良いこと」などと、好感を持って受け止められていたとのことです。

売り手市場で苦戦するある地方銀行では、銀行の堅いイメージを払拭するために、パーティースタイルの内定式を開き、「和気あいあいと柔らかい雰囲気を感じた」と良い評価をされていたとのことです。
同銀行の取締役は「銀行自体が変わらないと、学生はこちら向いてくれない。旧態依然とした組織ではなく生き生きと若者が働ける組織になることが重要」と語り、学生たちを引きつけようと、様々な工夫をしていました。
他にも、「自由な社風で服装も髪型も自由なので、学生の皆さんにも自由な服装で来てほしい」という会社がありました。

これから入社する会社に好感を持ってなじんで、仕事に早く慣れてもらう環境づくりなどの取り組みは、「オンボーディング」と呼ばれて、特に初めて社会に出ようという内定者には、重要な取り組みとされます。会社としてウェルカムな姿勢を伝えることは、これから入社しようという人たちにとっても、うれしいし心強いことでしょう。

ただ、大事な取り組みだと認める一方で、「本当にそこが本質なのか」と思ってしまうところがあります。パーティーで柔らかい雰囲気の会社が仕事でも柔らかいのか、服装や髪形が自由な会社が仕事でも自由なのかというと、必ずしもそうではありません。
柔らかい雰囲気を保ちたくても、仕事の中ではそれができない場面はあります。服装や髪形は、業種や顧客との関係などで、「時と場合によって適切に振る舞うこと」が問われます。当然あまり自由度のない場面もあります。

私は、新しく入社してくる人にやさしく振る舞うのは良いと思いますし、服装や髪形もTPOに合わせていれば何でも良いと思っています。
ただ、内定式の目的は、お互いにもっとよく知り合うことであり、これから入社してくる新入社員に少しでも不安を減らして安心してもらい、希望を与えることです。
不安の根源は「未知であること」「わからないこと」「知らないこと」ですから、その解消は自由さや良い雰囲気をアピールすることではなく、未知の部分をいかに減らすかということになります。

それは相手に合わせて気分よくさせるだけでなく、こちらの事情も知ってもらわなければなりません。仕事になったとき、どんな難しさがあるか、どんなサポートがあるか、どうすれば対処できるかなど、本当の姿を知らせる必要があります。
不安要素を伝えることを先延ばしして、あとから一気に多くの問題が降ってくるより、少しずつ知らせて理解してもらっておく方が、無用なショックと不安を減らすことができます。

自由な「内定式」が、本来の目的を満たす効果的なものであればと思います。


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