2021年6月24日木曜日

自分の仕事を囲いこみたくなる気持ち

ある会社で、自分の仕事を囲いこんで他人に渡さない事務職の話題になりました。

それなりの経験年数がある人ですが、自分の担当業務に他人がかかわることを極端に嫌い、上司にすら報告を拒むことがあるようです。その一方、自分の担当以外のことには絶対に手を出しません。サポートを依頼しても何かと理由をつけて対応しないそうです。

 

この手の話は結構多くの会社で聞きます。年齢や性別による傾向はあるような気もしますが、必ずしも言い切れないので、基本的には個人のキャラクターによるところが多いのでしょう。

ただ、私が見ていてこういう行動をする人に、共通していると思うことがあります。それは「もしかすると仕事を失うかもしれない」という不安と「自分の方が上の立場で優位でいたい」というマウンティングの心理のどちらか、もしくは両方持っているということです。

 

例えば、わりと定常的にこなせる事務担当であったり、体制縮小が決まっている部門の構成員であったり、定年間近で自分の仕事の引き継ぎを求められていたりという人たちですが、そういう人たちは、今やっている仕事が異動や担当変更、システム化などによって変えられてしまうかもしれず、なおかつそれを恐れているような人たちが、仕事を囲いこむという行動に出がちです。

「自分の方が上」「できる」という立場を維持したい人も、基本的には同じことをします。他人には情報を与えずに「出る杭は打つ」ということをします。

 

そう思ってしまう気持ちはわからなくはありません。よく「変化対応力」が今の時代では大事といいますが、人間の本能として「変化を避ける」ということがあります。その理由は、できるだけ変化を避けていた方が生存確率が高いからです。

例えば、今が原始時代だったとして、誰も行ったことがない場所に食料調達に行こうとするような人は、命を落とす確率が高くなります。しかし、安全に食料を得て帰ってくることに成功すればヒーローであり、その後の食料調達への道が開けます。つまり「変化に挑戦する人」「変化に向き合える人」は少数の特別な人で、それ以外は「変化を避ける」ことで身を守ろうとするのが普通なのです。

 

そこから考えると、「仕事を囲いこむ人」に、本能的には普通の行動をしています。この認識を変えるには、他のみんなと仕事を共有した方が自分も得をするとインプットしなければなりません。仕事が変わっても奪われることはなく、立場は変わっても尊重されることを理解させなければなりません。

 

こういうことには、つい理屈だけで対処しようとしがちです。効率、生産性、危機対応、あるべき論、その他いろいろな話で納得させようとしますが、「仕事を囲いこむ理由」には、実は感情的な部分の比率が意外に高いものです。そうであれば、「大丈夫」「支援する」「気持ちはわかる」など、感情に寄り添うニュアンスも合わせて必要です。

 

理屈で説得しても変わらないとき、その要因は感情にあります。そもそも人間が本能的に変化を避けたがることは、理解しておく必要があります。

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