2022年1月17日月曜日

「相対評価」と「2:6:2の法則」に関する話

企業の評価制度に関する相談の中で、「相対評価のうまい進め方」を聞かれることがあります。相対評価とは評価ランクごとの比率が前もって決められていて、その比率に当てはめて評価をしていくものです。例えば、実質的にはA評価のレベルに達していたとしても、他にもA評価の人が大勢いた場合、所定の人数に合わせて評価を調整するものです。序列付けの評価とも言え、誰かを蹴落とさなければ自分の評価は上がらないことになります。

対義語は絶対評価となり、これは所定の基準に基づいて絶対的に評価する方法ですが、結果説明がしやすく納得が得やすいことや人材育成に活かせることから、今はこちらを主流に組み立てる評価制度の方が多いでしょう。

 

ただ、会社としての給与の総額は決まっていますし、組織上のポストの数もおおむね決まっているので、昇格者の人数にも限りがあることを考えれば、評価結果を相対化することは、それなりに理にかなっています。経営陣にとって相対評価は便利ですが、現場に近くなるほど、評価をしたりされたりする当事者になるほど、相対評価は不満を生みがちです。

 

この相対評価をうまく運用したいといっても、実際にはそんなに良い方法はありません。能力基準や目標達成度などとは異なる指標で、主に他人との比較によって評価されるわけですから、やはり納得は得にくく、評価結果をもとに指導や教育をすることも難しくなります。

 

この相対評価の話をするとき、「2:6:2の法則」に関する話が時々出てきます。組織や集団では、優秀な上位が2割、平均的な中位の人材が6割、下位のグループが2割にわかれるという考え方で、アリの集団でも同じことが見られるといいますが、これを相対評価を実施する上での根拠のように言われることがあります。

 

実際の現場を見ていて、2:6:2の法則」に納得することは確かにありますが、一般的な相対評価につながるかといえば、その捉え方は少し違います。

相対評価では、平均が中心値で1番分布が高く、左右対称で両側へ行くほど低くなるような分布を考えていることが多いですが、「2:6:2の法則」では、中心の6は平均的な中位の人材、普通に働く人とされています。つまり上位と中位を足した組織全体の8割は、多少の濃淡はあったとしても、おおむね平均以上に働いていることになります。

 

絶対評価をしている現場で見ていると、明らかに良くない評価、マイナス評価が出てくる比率は通常で1割あるかないか、厳しく見ると2割近くになることもあるという感じなので、8割の人は普通以上には働いているという点は合致していると感じます。これを無理やり正規分布に押し込めようとしても、ひずみが出てくるのは当然です。

 

私が良くお勧めするのは、評価を金額に変換する、ポストを割り振るなど、相対化や序列化が必要な部分のロジックだけあれば、評価自体を相対化する必要はないということです。全員がA評価でも、業績が悪くて原資が少なければ、各自の実入りも少なくなるようなイメージです。

 

相対評価と絶対評価は使い分けが大事ですが、相対評価で半数の人を「平均以下」「マイナス」かのように評価してしまうのは、あまり良い方法ではありません。

実際、「できない社員」がそんなに大勢いる会社を、私はまだ見たことがありません。「2:6:2の法則」でいう上位2割だけに注目するのではなく、普通以上が8割という見方をすると、人事施策はいろいろ変わってくるのではないかと思います。

 

 

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