2022年4月11日月曜日

「セクショナリズム」は本能的なものという話

特に日本における組織上の問題として、部門間のコミュニケーション不足、自部署以外に責任を押し付ける他責、自分たちだけに都合が良い仕事の囲い込み、その他縦割組織りの弊害である「セクショナリズム」の問題がよく挙げられます。

部門や社員個人が自身の権限や利害関係にこだわって、他者との協力を拒んだり、極端な安全志向で変化を嫌ったり、組織全体の利益を考慮せずに行動したりすることで、事なかれ主義、官僚主義などと表現されることもあります。

これは全く珍しいことではなく、どこでも何らかの形でほぼ確実に起こっていると考えてよいことです。ただし、当事者たちがそのことに気づいていない場合はあります。

 

この「セクショナリズム」を改善するためには様々な取り組みがされ、私たちのようなコンサルタントもそのお手伝いをします。

社内の制度改革、組織風土改革、権限移譲の促進といったことが多いですが、それぞれ簡単に進むものではなく、活動をやめるとすぐ元に戻ってしまいます。

 

この「セクショナリズム」については、「生き物としての本能である」という話を聞いたことがあります。地球上の多くの生き物には「縄張り」があり、これを守ることが食料を得ることや子孫を残すことで重要だからです。身近で言えば犬や猫、ちょっと離れて猿や鹿には縄張り意識があるそうです。

 

「縄張り」というのは自分の居場所の既得権ともいえるもので、これを侵されることは身の安全や命の危険にもかかわるため、強い不安を持ったり強烈な怒りを感じたりします。ですから自分の居場所の安定を求めるのは、本能として当然のこととなります。

 

「セクショナリズム」が本能によるものとなってしまうと、これを覆すのは難しくなりますが、ここで必要なのは理性です。動物は基本的に理性を持たず本能に基づいて行動するので、「縄張り」という「セクショナリズム」をなくすことはできませんが、人間は「理性」によって本能を制御することができます。

お互いを敵視せずに良好な協力関係を作ること、職種転換や異動などの様々な変化に順応すること、不安や怒りをコントロールすることなどは、理性があってこそできることです。

 

そうなると、「セクショナリズム」が起こる組織は理性が欠けていることになってしまいますが、これが明確に当てはまらない組織は数多くある一方、そう感じてしまう組織に出会うこともあります。その多くは「リーダーの行動に理性的ではないものが含まれている」という場合です。

仕事や人員の囲い込み、責任回避、押しつけ、他部署攻撃など、その内容と程度は様々ですが、やはり根本はリーダー自身の不安や怒り、守りの姿勢など、生き物の「縄張り」に由来する本能のように見えます。これを解決するには、リーダーの理性が大きく高まるか、リーダーを別の人に変えるかの二つの方法しかありません。しかし、前者は相当長い時間や偶然が必要であり、少なくとも私は実際に見たことはなく、ほとんどが後者の「リーダーを変える」という方法です。

 

「セクショナリズム」は本能的なものという視点で考えると、これを防ぐためには「リーダーが理性的」ということが重要になります。それがなかなか難しいために、「セクショナリズム」がなくならないとも言えるでしょう。

これからのリーダーの資質として、理性的という点は考えておかなければならないのではないでしょうか。ちなみに今起こっている戦争でも、同じようなことを感じてしまいます。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿