2022年9月5日月曜日

「帯に短しタスキに長し」のとらえ方

 企業での人材の配置や役職任命、その他役割分担の中で、「帯に短しタスキに長し」という言葉が上司から発せられることがしばしばあります。似た言葉では「あちらを立てればこちらが立たず」「痛し痒し」など、両立が難しいことを言っているようです。

 

基本的には「役不足」を意味していて、まだ任せられないとするのか、それでも任せてみようとなるのかは、状況によって様々です。ただ、この言葉が出てくるとき、多くの場合では「短し」に注目しているように感じます。「これができないから全部無理」という判断です。

 

ふと、この「帯に短しタスキに長し」という言葉の意味を、いろいろと考えてしまいました。

思ったのは、短いものを帯に使うことは100%無理だが、長いものをタスキに使うのは、いろいろ目をつぶればできるということです。人材に活かし方として、もう一歩進んで「ではその長さで使えるものは何か」と考えると、さらにいろいろなことが見えてきます。

 

「できない人にそこまで目をかける必要はない」との意見もあるでしょうが、私がなぜこういうことを考えるかというと、今いる人材をどうにかして活かしていかなければ、会社の仕事が回らないというケースを、最近よく目にするからです。「能力不足があるから別の人に」ができる人材豊富な会社は、どんどん減ってきています。

 

例えば、役職定年は世代交代を促す仕組みの一つで、年長者が権威を盾にして居座ることができないのはメリットですが、どんなに能力が高い人材でも一定年齢で役職から外れる必要があります。そこで適切な後任者がいなければ、組織全体の力としてはたぶんマイナスに働きます。そして、「適切な後任者がなかなか見当たらない」という話をよく聞きます。

ここでできることは二つしかなく、役職定年を踏み越えて能力が高い人材に続けてもらうか、多少のことには目をつぶって後任者を選んで託すかのいずれかです。そこで出てくる言葉が、まさに「帯に短しタスキに長し」です。

 

気を付けなければならないのは、能力が高い年長者に役職を任せ続けても、これから先の伸びしろはあまり見込めないということです。やはり新たな人材に託した方が、組織の将来を考えると健全なことでしょう。

この時に、短いものを伸ばすには一定の時間がかかります。その一方、長いものは切ればよいことで、こちらはすぐに対応できます。「短し」にあたるのは主に能力的なもの、「長し」にあたると思われるのは心構えなどの意識的な問題と、これまで能力発揮する必要がなかったなど機会の問題です。

この切り分けをして、次の人材を選んで託すことが重要ですが、意外に見極めができていないと感じることがあります。

 

「短し」は対応に時間がかかり、「長し」は環境を変えるだけですぐに対応できる可能性があります。これからは、そうやって身近な人材の力を最大限に発揮させることを考えなければならない時代です。新たな人材の採用はどんどん難しくなります。

そもそも、ぴったりの適任者は、そう簡単には見つからないものです。

 

 

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