2022年12月12日月曜日

「ホラーストーリー」と「サクセスストーリー」の使い分け

 ビジネスの中で考えられる事態を、過去の失敗体験をもとに想定して、そこから広がる可能性がある悪影響を語るという手法は、「ホラーストーリー」と言われます。

極端なものだと「このまま業績低迷が続くと会社は倒産してしまう」というようなものですが、このような最悪の結果想定を見せられることで、人はそれに対する危機感を持つようになり、そうならないためにどうすればよいかを考え、そのための努力や行動し始めます。これがホラーストーリーの効果と言われるものです。

この反対にあたるのが「サクセスストーリー」と言われるもので、過去の成功体験をもとに、これからからやろうとしていることの効果や有効性を語るものです。

 

前者は失敗事例から不安感や危機感をあおることで行動を促し、後者は成功事例が自分たちにも当てはまるかもしれない期待感が行動を促します。また、どちらも想定に対する疑いをもたれることがあり、前者は不安感や危機感が、その努力や行動によって本当に解消できるのか、後者であれば、同じような成功につながるには環境や条件が違うのではないか、などの疑問が生まれます。

少し見方を変えてみると、「アメとムチ」とか「ポジティブ思考とネガティブ思考」といった形で言い換えができるかもしれません。

 

これらはどちらが有効ということはなく、結局はバランスよく使い分けることが必要ということになります。これは会社の規則や制度、日常的なマネジメントの中でも同じことが言えます。

例えば、服務規律や勤怠管理のような決まりごとは、守らないと不利益が降りかかるというホラーストーリーがあります。一方で資格取得の援助など会社からの支援制度や提案制度のようなものは、取り組むと自分に良いことがあるというサクセスストーリーもしくはハッピーストーリーがあります。

評価制度などでは、取り組みが好ましく見られてプラス評価されることと、不利益が生じたり不都合があったりしたことからマイナス評価されることの両方があります。

日々のマネジメントではさらに細かい内容で、やっておかなければ困ることと、やっておくと好ましいことの両方があり、その内容が個人個人で違ってきます。

 

私が現場の状況を見ていて思うのは、このバランスを欠いているように見える場合が意外に多いことです。目標達成しなければ報酬が減る、できなければペナルティがあるなど、ノルマ管理のホラーストーリーばかりでメンバーを縛っていたり、反対に現実性に乏しい夢や希望ばかりを語っていたり、自主性を重んじるという理屈で何でも丸投げしていたりするなど、サクセスストーリーの示し方が適切でなかったりします。

このバランスが難しいのは、不安感や危機感などホラーストーリーにつながる感覚と、期待感や高揚感のようにサクセスストーリーにつながる感覚は、どちらも個人の主観によって左右されるもので、同じことに対して反応が違ってくるところです。

規則は一定の基準で決めざるを得ませんが、制度は運用上の使い分けが必要になり、日々のマネジメントではさらに相手の感じ方を考えたうえでの使い分けが必要になってきます。不安感は過剰なストレスを生み、危機感は継続しづらく、期待感や高揚感は実現性が低いと効果が薄れます。

 

難しいことですが、「ホラーストーリー」と「サクセスストーリー」の使い分けとバランスは、いつも意識しておかなければなりません。

 

 

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