2019年1月21日月曜日

「どこでも通用する力を身につけるため」に転職する若者たち


取引先の担当者で、約半年ほど一緒に仕事をしていた女性が転職するとのことです。
その理由は「今の会社には3年くらい勤めたので、そろそろ環境を変えて違う仕事を経験するため」だと言います。
決めている訳ではないが、独立して仕事をすることにも興味があり、私がそういう形で仕事をしていることについて、「どんな感じか」と質問されました。ただし、今のところは会社勤めでいろいろ経験してみようということです。

女性が在籍していた取引先は、それなりの知名度があって待遇も悪くない会社です。仕事内容に不満があった訳でもなく、人間関係も良好な様子でしたから、純粋に自分のキャリアとして、仕事の経験値を上げるための転職だと思います。

こういう理由で転職する若者は最近意外に多いようで、ある調査によれば、希望通りの会社に入った後に転職した人の転職理由を追いかけると、そのほとんどは「どこに行っても通用する力を身につけたい」ということだそうです。「同じ会社に居続けることは危険」と考える若者が増えていると言います。

私の身近では、わりと若い世代と定年に近い60代の両極で、独立して仕事をすることを考えている、もしくはすでに実行している人たちが結構大勢います。
60代のシニアの場合は、それまで勤めた企業での経験を活かして独立しようという人がほとんどですが、中には企業ブランドありきの殿様商売的な発想の人や、資格があれば仕事がある、今までの人脈で紹介してもらえるなどと安易に考えている人がいて、どちらかというと独立する上でのマインドに問題があります。

その一方、若い世代の場合は、事業内容や商材に関する課題を感じることはあっても、マインドが問題と思うことはほとんどありません。自分が起点となって、周りに過度に依存せずにできることは自己完結しようとする行動が、基本的に身についており、それまでのキャリアを見ると、今の仕事につながることがきちんと逆算して積み上げられています。
例えばエンジニア職で商品やサービスの開発を経験し、次は営業職でセールスの現場を知り、さらに経営企画で事業計画や会社のお金の動きなどを扱う仕事を経験した上で起業するという感じです。

それなりの規模の会社であれば、これらの仕事をすべて一社で経験することは可能ですが、それが自分のプラン通りになることはなく、あくまで会社の意向次第です。自分で計画的にキャリアを積むには転職するしか手段がありません。
また、一社だけでの経験は、偏りがあるというのも確かです。経験を増やすという意味では、転職によって違う会社のやり方を知っておく方が望ましいでしょう。

これを企業側から見ると、どんなに職場環境を整えても、どんなに良い待遇や良い内容の仕事を与えても、転職を防ぐことはできないということです。
さらに、この不透明な時代背景で、「同じ会社に居続けるのがリスク」と考える人が、今後増えるのは間違いありません。同じ会社に居続けるのは、愛着という反面、会社に依存しているとも言えます。愛着があっても自分のキャリアのために依存しないとなれば、転職する人は増えるでしょう。

私がよく相談を受けるテーマの一つに、退職者対策があります。離職率の低下が主な目的ですが、昨今の環境変化の中で、それ自体がどんどん難しくなってきています。
これから会社が考えなければならないのは、人が辞めていく前提でどう振る舞うのかということです。

会社に対しては愛着や感謝を持っていて、それでも辞めてくわけですから、その人といかにつながりを継続するかを考えた方が、会社にとってはプラスでしょう。仕事上の取引関係でつながっても良いでしょうし、出戻り歓迎という仕組みがあっても良いでしょう。場合によっては退職者を集めてOB会のようなコミュニティを作っても良いかもしれません。辞めていく人にとってのメリットが提供できれば、こういう取り組みも成立させることができるでしょう。

これらは、すべての退職者に一律にできることではありませんが、これまでのように退職すると縁が切れてしまうのは考え直す必要があると思います。
私自身、独立してから数年後に、退職した会社から仕事の依頼を頂いたことがあります。当時は「よく依頼してくれたな」という感謝がありましたし、一方で縁を切らずに付き合いを続けていた自分なりの意識もありました。

「どこでも通用する力を身につけるため」に転職する若者を応援すれば、会社にとっても有益なことがあると思います。


2019年1月17日木曜日

「リスクと取らないことこそリスクだ」という話


「リスク・マネジメント」とは、“リスクを組織的に管理して、損失等の回避や低減を図るプロセス”と定義されますが、その重要性が東日本大震災以降は、事業継続の観点から一層強調されるようになりました。

私もそれが大切だということは、それなりにわかっているつもりでしたが、つい最近専門家の方からお話を聞く機会があり、そこでの話は私自身が今まで持っていた認識とは少し違ったイメージのものでした。「リスク・マネジメント」は、ただ「リスクを避けること」だけではないという話です。

「リスク・マネジメント」は、日本語に直訳すれば「危機管理」となりますが、「危機」の“危”は文字通り危ないということと合わせ、“機”は機会の意味だといいます。
「リスク」の語源には諸説あるようですが、イタリア語で「勇気をもって試みる」という“risicare”や、アラビア語で「今日の糧を得る」といった意味の“risq”があり、まさにポジティブに何か得るための「機会」の意味です。

「リスク」には二面性があって、災害や紛争のような「ハザード」の意味で、そこから受ける被害を最小化することがありますが、その一方で、発展を目指して何か行動する際に失敗の芽を先に摘んでおくことや、実行するための安全度を増すという側面があります。リスクを避けるだけでなく、リスクをとって対処するということです。
「橋を渡らないことではなく、橋を渡るために必要なのがリスク・マネジメントだ」ということでした。

こういわれると、仕事上の行動や日々の活動が、すべてそれにつながっている感じがしてきます。
外出しなければ交通事故にあう可能性は限りなく低くなりますが、それでは経験できることがかなり限定されます。
人間関係の軋轢を避けるだけならば、他人とは一切付き合わなければ良いですが、それでは人を関わることで得られる喜びはありません。
ネットの炎上防止も、発信をやめるよりも発信のしかたや内容を考えた方が前向きです。
新規事業や起業などはまさにそうで、そんなことをしなければ失敗することはありませんが、成功する可能性もありません。

リスクと聞くと、ついつい「危険」を避けることばかりに意識が向きますが、本来はリスクをとって「機会」を作り、そこで起こる問題に向き合うことで、最終的な果実が得られます。
「リスクと取らないことこそリスクだ」という言葉も目にしました。

身の回りの「リスク」を見直し、そのかかわり方をあらためて考えると、実はもっと積極的に取り組めることがたくさんありそうです。今までとはもう少し違ったことができるのではないでしょうか。

2019年1月14日月曜日

自分で「何とかできること」と「どうしようもないこと」を区別する


ある会社のメンバー数人が、自分たちのチームリーダーに対して、「話を聞いてくれない」「指示が不明確」などと言い、「リーダーの仕事をしていない」などと不満を話しています。

その矛先のチームリーダーに話を聞くと、こちらはちょっと悩んだ表情をしながら、「メンバーたちに自分の思いが伝わらない」といいます。
リーダーが言うには、チーム内で日常業務として当然やるべきことが放置されていたり、指示したことが徹底せずにルーズに扱われていたりすることがあるそうです。メンバーを気づかっているつもりのことが、かえって裏目に出て反発を浴びたりすることもあるといいます。

チーム内のコミュニケーションに問題があるのは間違いありませんが、それぞれの立場で言っていることには、共通している点があります。それは「相手が自分の思い通りの行動をしない」と不安を言ったり批判したりしていることです。

ここで考えなければいけないことは、「他人が自分の思い通りにならないのは当たり前」ということです。相手に自分の意志を伝えて働きかけることは「何とかできること」ですが、その結果がどうなるかはあくまで相手次第で、自分でコントロールすることはできません。相手の行動は、自分では「どうしようもないこと」です。

いろいろな人に話を聞いていると、この「自分ではどうしようもないこと」に対して、いら立ったり腹を立てたり、不満を言ったり批判をしたりということは、実は思いのほか多いです。自分では「どうしようもないこと」で、よけいなストレスをためています。
ここでお勧めしたいのは、「自分で何とかできること」と「自分ではどうしようもないこと」を、しっかり区別する習慣です。このことを意識していると、特に人間関係上の他人に対する不満は、ずいぶんと軽減されます。

前述の話であれば、例えばリーダーが「話を聞いてくれない」ことは、話を聞かない相手の行動を変えることはできませんが、聞いてもらえるまでこちらから話し続けることはできます。
リーダーの「指示が不明確」なことは、相手の指示のしかたは変えられませんが、自分から指示を確認して明確にすることはできます。
「指示が徹底せずにルーズになる」というのも、自分で「何とかできる」のは、指示が徹底するように伝え続け、確認し続けることまでです。

人間には、自分の努力ではどうしようもないことがあり、それは他人の気持ちであったり組織上の制約であったり、その他いろいろあります。そんなことはいくら考えても仕方ないことで、そういうことは放っておくしかありません。

相手の気持ちや行動を変えようとしても、相手にその気がなければどうにもなりませんが、自分の行動は自分で変えることができます。
自分で「どうしようもないこと」をしっかり区別していると、逆に自分で「何とかできること」が見えやすくなります。

自分では「どうしようもないこと」に関する悩みが、意外に多い感じがしています。