2014年8月4日月曜日

うのみにしてはいけない「顧客要望」


あるテレビ番組で、「こんなものがあったら良い」という意見を、実際に試してみるという企画をやっているのを偶然見ました。

私が見たのは、アパレルショップの店員さんから声を掛けられるのがわずらわしいので、入口を“通常の接客”“声をかけない接客”に分け、お客さんが希望する接客の側から入店してもらうようにするとどうなるかというものでした。

来店したお客さんの意見は、「あまり声を掛けられたくない」「そっとしておいてほしい」「ゆっくり見たい」というものが多く、実験中に来店した人の8割以上が“声をかけない接客”の入口を選んでいました。お客さんには好評ですが、店員さんは自分から接客ができないので、手持ちぶさたでかなり暇そうです。

一見すれば、「顧客要望」には応えている訳で、良さそうな取り組みのように思えますが、実はこの実験中の時間帯の売上は、通常からは信じられないほど低かったのだそうです。顧客からは必ずしも好ましいと捉えられていなくても、声かけや接客など、店員さんの持つ販売能力というのは、売上に対する影響力が大きいということでしょう。

ここから考えれば、「顧客要望」を言われるままにうのみにして聞くのではなく、店員さんの販売能力を発揮させ、なおかつ顧客からわずらわしいと思われない声かけや接客方法を考えていくことが、とても大事だということがわかります。

ただ実際の現場を見ている中では、顧客満足と称して、顧客から出てきた意見や要望、指摘を、そのまま受け入れて直そうとする取り組みが多いように思います。顧客側がそれを強硬に要求することもありますし、企業の担当者やお店の側が、そうすることが良いことだと信じて思考停止してしまっていることもあります。

例えば、採算を度外視したサービスというのは、あくまで将来の事業のための先行投資として、ある一定期間だけ行うものであるはずです。本当に採算度外視のサービスをやり続けたら、企業やお店はつぶれてしまいますが、顧客の立場からはそれを知るよしもありません。それがあたかも“心がこもったサービス”のように賞賛し、いつしか当たり前のように思いこんでしまうことがあります。

ビジネスはWin-Winの関係がなければ、長続きさせることはできません。事業が続けられなければ、顧客に満足を届けることは永久にできなくなります。
目先の「顧客要望」をうのみにして応えても、それは本当の意味での顧客満足にはつながらないと思います。


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