2014年8月13日水曜日

あって当たり前の「衛生要因」ばかり増えていないか



アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機付け・衛生理論)」というものがあります。
人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなく、満足に関わる「動機付け要因」と、不満足に関わる「衛生要因」があり、これらはそれぞれ別のものであるとする考え方です。

「動機づけ要因」は、それがあることが満足につながり、「衛生要因」は、それがあることは当たり前で、不足すると不満につながるということです。

「動機づけ要因」にどんなものがあるかというと、「達成」「承認(成果が上司に認められるなど)」「仕事そのものへの興味」「責任(大事な仕事を任されるなど)」「昇進」「成長」などが挙げられ、「衛生要因」には、「会社の政策と管理」「監督技術」「監督者との関係」「作業条件」「給与」「同僚との関係」「部下との関係」などが挙げられています。

この理論自体には、調査方法などに問題点が指摘されるというようなことがありますが、最近の企業の現場事情を見ていると、ちょっと気になることがあります。
満足度が上がる「動機づけ要因」より、無いことが不満につながる「衛生要因」の方が圧倒的に多く、なおかつそれが増えてきているのではないかということです。

例えば、労働条件や給与のような会社の制度は、どちらかといえば「衛生要因」として見られます。休みが増えたり給与が上がったりしても、その効果は一時的で、すぐにそれが当たり前の「衛生要因」になってしまいます。

企業の人事制度作りは私が良く関わるテーマですが、会社の制度が「衛生要因」となると、それを通じてやる気につなげるのは難しいということになります。
制度の運用が大事だというのは、そんなところにも意味がありますが、最近は運用にいくら工夫をしてもなかなかやる気にはつながらず、「衛生要因」と捉えられることが多いように感じます。

マネジメントにおいても、上司や監督者との関係は「衛生要因」となると、上司のおかげでやる気が高まることは稀で、ちょっとした振る舞いが不満を招くことの方が多いということになります。上司や管理者によるマネジメントは、できて当たり前ということなのでしょう。

「衛生要因」というのは、私は他者への要求水準というイメージで捉えていますが、最近いろいろな場面でこれらが高くなりすぎているような気がします。俗に言われるクレイマーなどというのは、こんな傾向を表す一つの要素なのかもしれません。

私はこの「二要因理論」は、結局周りから与えられるものに対して一喜一憂しているだけのように感じてしまいます。自分自身のやる気なのに、それが他人のせいなのです。

会社としての環境作りが必要なことは理解するものの、「動機づけ要因」を増やすことも、「衛生要因」を減らすことも、自分の捉え方次第でできるのではないかと思います。すべてが会社のせいではないと思います。

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