2015年1月21日水曜日

チンパンジーは競争の激しさで「攻撃性」を持ったという話から思ったこと


ある新聞で、“チンパンジー”とその近縁にあたる“ボノボ”に関する性格の違いについて書かれている記事を見ました。

見た目はそっくりだが、チンパンジーはオスを中心とした集団で強い攻撃性が見られ、順位が1位のボスが仲間のオスに殺されたり、他の集団を攻撃してそのメンバーを殺害したりという、「戦争」行為をするのだそうです。
一方ボノボでは、そのような例は疑わしいものが1例あるだけで、攻撃性はほとんど見られず、オスとメスが対等な営みを築く「平和主義者」なのだそうです。

この違いは、諸説ある中では、結局「生まれつき」という説が有力だそうで、生殖に関わることが大きな理由ではないかということです。
チンパンジーはメスの発情期間が短く、オスは交尾の機会を巡って常に激しい競争にさらされるのに対して、ボノボは発情期間が長く、交尾や挨拶行動を通じてオスとメスがお互いの緊張を和らげるため、争う理由が少ないためではないかということでした。

私はこの“競争”という部分を、ついつい事業活動や企業組織に当てはめて考えてしまいました。
事業は会社同士の競争ですし、今は市場がどんどん拡大するような状況ではありませんから、当然競争は激しくなっています。
また、多くの会社で取り入れられている“成果主義”も、組織内のメンバー同士を競争させる仕組みです。会社によって、その程度はいろいろでしょうが、競争の激しくなっている会社が増えているのではないかと思います。
ちなみに、チンパンジーで攻撃性を持つのはオスばかりらしいですが、ここから考えれば、企業組織の中で女性登用が進みづらいことにも、もしかするとつながりがあるような気がします。

そもそも資本主義の考え方自体が競争原理ですから、当然厳しい競争にさらされるわけですが、今の技術の進歩や経済発展は、競争があったからこその人々の生活向上という面があります。

その一方で、競争をすれば必ず勝者と敗者に分かれます。全員がいいとこどりにはなりません。競争に勝たなければ自身の生活がおびやかされるとなれば、自分が何とかして勝たなければと考え、そこにはある種の「攻撃性」が出てくることもあるでしょう。
競争の激しさが増すということは、そこに関わる人々の攻撃性も増すということで、いろいろな場面でこの傾向が少し強まってきているような感じがします。

ただ、最近はこれとは少し違う方向性の動きもあります。
例えば20代、30代という世代を中心に、社会起業家といわれるような経営者がいます。事業活動という形は取りますが、その成功による社会貢献を目的としており、自社の利益や報酬より、社会を変えることに意義を見いだす活動です。
周りよりも上を目指すという、上昇志向に基づいた競争よりも、共助や共存、協調という要素が重視された事業活動です。

切磋琢磨という意味では競争が必要ですが、この行き過ぎは他者に対する「攻撃性」につながります。かつて行き詰まった旧来の成果主義も、競争をあおり過ぎたゆえの結果だと思います。
正しい競争をするためには、他者と協調することも必要になります。

一方で、ただ共助、共存、協調といったことばかりを強調しすぎると、それが馴れ合い、甘え、依存体質といったことにつながります。それは決して世の中の望ましい姿とは言えないように思います。

やはり競争と協調の間には、バランスが必要です。
チンパンジーやボノボには難しくても、人間であれば、競争と協調の良いバランスを見つけることはできるのではないかと思います。


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