2015年1月28日水曜日

優秀な部下を囲い込まない、管理者に必要な「全体最適」の視点


この時期になると、そろそろ次年度に向けた計画や社内の組織体制づくりが本格化し、個々の社員の異動や配置換えも、内部的な調整がされている頃ではないかと思います。

人事異動の進め方というのは、会社によって様々です。社長の鶴の一声のところも、人事部門が中心で調整するところも、当事者である部門責任者同士で折衝するところも、またそれらを使い分けるようなところも、本当にいろいろだと思います。

ただ、異動の検討中か決定後かの違いがあっても、本人への内示よりも、先に直属の上長の方へ打診や相談、もしくは伝達などを受けて関与することが大半だと思います。
そんな中で、私が人事の立場でかかわった経験では、この直属の上司が、部下の異動に対して頑強に抵抗するということがときどきあります。
やはり、優秀な部下、気心が知れた部下、自分にとって使いやすい部下などは、できれば自分の手元に置いておきたいということでしょう。

また、自己申告、社内公募、FA制度といった形で、社員自身の希望で異動を促進する制度がありますが、実際に希望が叶う率は1割程度というような会社も多く、これらの制度がなかなか活性化しない部分があります。もちろん会社側にも原因はありますが、前述の状況と同様に直属の上長が積極的でなく、本人の意志とは言いながらもそこに影響を与えていることがあります。

確かに、自部門の事情を中心に考えれば、その主要メンバーを囲い込むことは正論かもしれませんが、組織内での人事異動を避けていると、そのことによるデメリットがあります。
例えば
◇社員の適性を見出す機会が失われ、 適材適所の配置ができない
◇社内のコミュニケーションネットワークが広がらず、部門内に閉じた硬直した環境になる
◇職務のマンネリ化と、それに伴う社員のモチベーション低下のおそれがある
などが挙げられます。

やはり、管理者の立場であれば、自部門に閉じた「部分最適」ではなく、組織全体の状況に目を配った「全体最適」の考え方が必要です。

これはある会社の課長さんのお話ですが、部下に対する異動の打診に対して、「彼には、○○の適性があると見ていて、本人もそのキャリアに興味を持っているので、あと1~2年は自部門のプロジェクトで経験を積ませて、他部門へ異動しても通用する基礎作りをさせたい」とおっしゃり、異動の見送りを会社側に納得させたということがありました。まさに社員個人と会社全体の将来の両立を考えた、「全体最適」の視点だと感心したことがあります。

このような「全体最適」の視点がないような主張は、部門管理者の単なるわがままと同じことになります。自部門の都合を優先した「部分最適」でしかありません。それでは会社全体の業績は上がりません。

“会社が決めたことだから”と何も考えず、ただ長いものに巻かれるような態度はもってのほかですが、少なくとも管理者の立場であれば、人事異動だけに限らず、会社の施策に対する意見や反論が、「全体最適」の視点にかなっているのかどうかは、常に意識しておく必要があると思います。


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