2015年3月27日金曜日

会社が気をもむ「一人だけの新入社員」の帰属意識


それぞれは全く別の二つの会社から、全く同じような懸念を聞きました。様々な事情から、「一人だけ」を採用することになった新入社員についてです。

どちらも30名規模の中小企業ですが、一社は過去に新入社員を採用した実績はあるものの、経営体制が変わるなどの事情があったために、この数年間は新卒採用を行いませんでしたが、今期たまたま紹介された学生を一人だけ採用することになったという会社、もう一社はこれまでコンスタントに新卒採用をしてきたものの、業績が厳しく今期は見送りを考えていましたが、それでも世代の断絶は良くないと考え、結果として一人だけを受け入れることにした会社です。

どちらも、受け入れるからにはしっかり研修をして早く一人前に育てたいという意識がある会社で、これまでは社内でじっくり新人研修をやっていましたが、今回は社内で研修体制を組めないこともあり、3か月ほどの期間の外部研修に行かせることにしたそうです。

ここでの心配が、新入社員の会社への帰属意識です。どちらの会社もとても心配していて、私にもアドバイスを求められ、うち一社は送り出す前日に、意識付けの研修をやってほしいという依頼を受けています。

今回、私が大事なこととしてアドバイスしたのは、心理学でいう「単純接触効果」もしくは「単純接触の原理」などといわれることです。
これは「個体間の親密さは、接触回数、接触頻度が多ければ多いほど増す」といった事を指し、人間関係で言えば「顔を会わせたり、話したりする回数、頻度が増えるほど、相手に対して好感を持つ」ということです。

これに基づいてやることは明らかで、外部研修を受けている新入社員の様子を見に行く、メールをする、電話をする、食事などに連れ出すなど、いろいろな方法でできるだけ頻繁に接触するように心がけるということです。

これはある会社であったことですが、配属直後から客先に1人で常駐することとなってしまった新入社員の上司が、その新人に「用事があってもなくても、毎日17時に必ず電話連絡をしてくるように」と指示をしたそうです。

初めは話すこともないし、いちいち面倒だと思っていた新入社員ですが、それが習慣になってくると、「ああ、今日はこの話をしよう」などと、その日にあったことを考えるようになり、ふとしたある日、自分の会社、自分の上司をはっきりと意識するようになったそうです。

毎日電話の相手をした上司は大変だったと思いますが、会社への帰属意識という点では好ましくない環境でも、その新人の気持ちをしっかりとつなぎとめることができたのは、とても素晴らしいことだと思います。

この「単純接触効果」、「単純接触の原理」は、離れたところにいる新入社員でなくても使えるものです。信頼関係を作る、コミュニケーションを円滑にするなどというために、接する回数を増やすというような単純なことは意外に効果的です。

共通の話題がない、世代や価値観が違うなどといって、お互いが接することをついつい避けているせいで、コミュニケーションが悪くなり、仕事の上でも影響が出ているようなことがあるのではないでしょうか。

折り合いが今一つ良くない上司や部下がいるならば、まずは単純に接する頻度を増やしてみることが、意外に良い方法ではないかと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿