2015年7月10日金曜日

社内異動の捉え方で、ちょっと気になったこと


ある有名企業の経営者が、「社内異動なんかしている余裕はない」と言っている記事を目にしました。

世間に通用するような、一定の専門スキルを身につけようとすれば、関連性のない社内業務をローテーションしているようなことは、社会人人生の限られた時間の中では、そんな余裕はないという意味のようです。

私自身、この話については、確かに一理あるとは思いつつも、社内異動には、当然メリットもあります。

話に出てきた「専門性が積めない」ということは、確かにデメリットでしょうが、その一方で、いろいろな業務経験を積むことができる、視野や人脈が広がるなど、一般的に言われるようなメリットがあります。また、異動によって、同じ人が長く同じ部署に留まらないということでは、癒着や不正が起こりやすい土壌につながるということもあります。

結局は、これら社内異動による効果を、バランス良く活用していくことが大事なのだと思いますが、いくつかの大企業に所属している複数の人たちから聞いた話で、少々気になったことがあります。

それは、もともとは優秀な素養を持っているはずの人たちが、自分がやりたい仕事の希望や、将来の展望について尋ねても、それらに対しては何のイメージも持っておらず、会社から言われる異動や職種転換については、「とにかく精一杯忠実に、出来る限り応えていきたいと考えている」と言っていたことです。

愛社精神が旺盛、従順、現状に肯定的などということはできますが、その反面で、自分のキャリアを100%会社に委ねているということです。自分の身の上は会社が決めることが当然と思っていて、そのことに対する疑いは持っていないということです。

もちろん、自分のキャリアについて自分なりの危機感を持ち、異動に関する希望を出したり、自分なりに何かを学んだりという人もいますが、どうも会社が存在し続けることは当たり前、そこに在籍し続けることが最優先で、自分の職種へのこだわりや専門性へのこだわりは、比較的薄いという人が多いように感じます。

私は、年功序列も終身雇用も、その会社の企業文化に応じた使い分けだと思っているので、一方的に否定するようなことはありませんが、このように、自分のキャリアへのこだわりが希薄なのは、「今の会社にずっといる、いられる」と思い込んでいるという、年功序列や終身雇用による弊害ではないかと思います。

 専門人材もローテーション人材も、組織としては両方が必要ですが、どちらにも相応の専門スキルが必要です。
専門人材が身につけるべき専門性は、現場の技術や業務スキルにおける専門性であり、こちらは比較的意識されているところではないかと思いますが、ローテーション人材が身につけるべき専門性である、経営知識、マネジメント、リーダーシップといったことは、本当の意味で身に付いている人は、残念ながら少ない感じを受けます。社外に出た途端に通用しなくなる人が大勢いるからです。

社内異動に関して、実際に辞令が出れば、基本的にはそれに従うしかありません。
ただ、そんな中でも、自分の専門性は何なのか、自分のスキルや経験は他へ行っても通用するのか、そもそも自分のやりたいことはどんなことなのかなど、常に自分自身のキャリアを意識しておくことは必要だと思います。

どんな組織に属していたとしても、自分のキャリアを人まかせにすることだけは、絶対にするべきではないと思います。


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