2015年7月15日水曜日

その仕組みや制度は、本当に会社に合っているか?


企業にはいろいろな仕組みや制度が存在すると思います。そこにはユニークなものもたくさんあります。

例えばグーグルでは、社員が仕事の創造性を維持するため、できる限り組織階層をつくらず、仕事の管理をしないことを実践しています。

また、「20%ルール」といって、会社と社会をよくする目的であれば、就業時間の20%を、個人的に好きなテーマに割いてもいいというルールがあったりします。会社の考え方をよく反映していると思います。

私が最近お話をうかがったある会社の社長は、新たに「提案制度」の導入を考えているそうです。

「現場の意見を吸い上げて問題解決につなげる」という一般的な目的とともに、“自分なりの意見を考えて発信することで、自律性や積極性を育てる”、“今起こっている課題を、他人任せにせずに自分のこととして考える”“自分から発案させることで、その後の行動まで責任を持たせる”“行動力、実行力につなげる”などという意図があるそうです。
知人の会社がこういう制度を取り入れていることを耳にして、社長自身の自社の現状に対する問題意識から、自分たちでもやってみようと思ったようです。

社長は、自分の意図や、どんな効果を狙っているのかということを、かなり熱心に話すので、私は「とりあえず3カ月後にあらためて検証してみましょう」と言いましたが、こちらの会社の場合、正直言って私は、この「提案制度」は、簡単には定着しないと思っています。なぜかというと、この会社の今までの企業風土が、提案ということにはなじまないからです。

この社長はオーナー経営者で、会社での判断や決裁事項は、現状ではすべて社長に集約されています。良くも悪くも、社長がうんと言えば話が通るし、首を横に振る限りは、何も前に進みません。
 とにかく、いかにして社長の意向に沿うかが、この会社で仕事を進める秘訣になります。意向に沿わないことは、いくら提案しても無駄だということを、社員たちはみんな身にしみてわかっています。

そんな企業風土ですから、自律的な志向の人にとっては、息苦しい環境であることは間違いありません。自律的な人材は辞めてしまいがちで、今いる社員たちは、上からの指示に従順な人材がほとんどです。

ここからは想像ですが、これから「提案制度」を始めても、たぶん提案らしい提案はほとんど出て来ず、それに業を煮やした社長から、提案を出すことを、何らかの形で義務付けるような動きが始まり、多少何かが出てきたとしても、意味がある内容とはならず、制度として機能しないまま終わっていくような気がします。

 この会社で「提案制度」を機能させるには、社員の意識を変える取り組み、提案を出しやすくする制度上の仕掛け、象徴的に取り上げられる実績など、企業風土に合わせた工夫が必要だと思います。、

「提案制度」自体は、機能すれば良い仕組みだと思いますが、その運用に耐えられる土壌があるのか、発想できる人材はいるのか、そもそも提案が受け入れられる環境はあるのかなど、その会社特有の問題があります。これはどんな仕組み、制度においても同じことです。
 もしも、グーグルの「20%ルール」を真似して導入したとしても、会社によってはただのサボりの口実に使われるだけかもしれません。

構想している仕組みや制度があるならば、それが本当に自分たちの会社に合っているのか、あらためて慎重に見直してみる必要があると思います。その上で、自社の環境に合わせた工夫をする必要があります。


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