2015年10月2日金曜日

「その成果は運が良かったから」は本当なのか


ある会社の中堅営業マンの評価について、話していた中でのことです。

上司は「彼はやる気がないしミスが多い」と言います。目標達成しようという意欲が見られず、事務処理の不手際による顧客クレームが、年に何回かあるのだそうです。
大きなミスを定期的に起こす部下に対して、上司からすれば仕事を全面的に任せることはできないでしょうし、売上目標の達成もなかなかできなかったりするようなので、良い評価ができないのはやむを得ないことでしょう。

ただ、過去数年分が取りまとめられた、この人の売上成績を見ていると、決してトップクラスではありませんし、多少の波も当然ありますが、比較的コンスタントな成果をあげています。大きく伸びることもないし、目標に届かないことも多々ありますが、逆に大きく減らすようなこともありません。

このことを上司に尋ねてみたところ、「いや、それは彼の運が良いからなんです」とおっしゃいます。良く聞いてみると、比較的古くからの顧客や、受注に結びつきやすい常連客を、他の人から引き継いで担当する機会が多く、要は営業的な難易度が低くて売りやすい顧客が多いという、運に恵まれている部分が大きいのだそうです。

そう言われながら、まとめられたデータを見ていて、ある単純なことに気がつきました。この人の担当顧客の顔ぶれは、毎年少しずつ変わってきているのです。にもかかわらず、売上を維持し続けているということは、ただ運ということだけでは説明がつきません。

この点をあらためて上司に聞いてみると、少し考えながら、「そう言われてみれば・・・」と話してくれたことがいくつかあります。

例えば、毎年お客様から届く年賀状は、営業担当者の中ではこの人宛てのものが一番多いのだそうです。人当たりが良いので、顧客から名指しで対応を頼まれることは意外にあるようでした。
また、件数としては物足りないけれども、新規の営業活動も行い、いくつか受注につなげたものもあります。
担当顧客から関係先を紹介してもらうことも、他の営業担当に比べれば多かったようですが、上司はただ「運がいいから」という見方をしていたようです。

上司としては、今まで大きなクレームを受けるイメージが強かったために、顧客の評判が良いという捉え方はしていなかったようですが、こうやってあらためて過去データから見直してみると、環境が変わっていく中でも、ある程度の成果が計算できるということが言えます。
上司は、「ただ運が良いだけではないということがわかったので、これから彼の活かし方をもう少し考えなければならない」ということをおっしゃっていました。

運というのは、自分でつかみ取るというよりは、他人が運んできてくれるものだということが言われます。ここからすれば、運が良い人というのは、周囲との関係性が良く、人とのつながりが多い人です。

運をただの偶然、ラッキーと位置付けてしまい、出た結果は「運が良かったから」として、具体的に検証することをやめてしまうと、現実はどうだったのかということが見えなくなってしまいます。

運の良し悪しには必ず理由があり、それを活かせるか活かせないかには、何か能力の違いがあるはずです。「運が良かったから」は本当なのか、あらためて見極める必要がありそうです。


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