2015年10月23日金曜日

「新しいことをする」のはそもそも本能に反するという話



いろいろな企業のリーダー、マネージャー、経営者の方々からお話をうかがっていると、最近は「新しい事業モデルの開発」「新たな分野への挑戦」「現状打破」「変革」といったキーワードが出てくることが非常に多い感じがします。

今いる場所に安住していては、発展が望めないどころか、現状を維持することも危ういといい、「新しいこと」「挑戦すること」ができる人材が必要だと言います。ビジネスが変わっていくスピードの速さを考えると、この生き残りに対する危機感は当然のことだと思います。

ただ、そんな「新しいこと」「挑戦すること」ができる人材は、残念ながらそれほど多くはありません。何とか育てたいが、なかなか思うように育たないとか、そもそも育てるに値する人材がいないなどとおっしゃいます。組織を率いる立場の方々は、みんなそのあたりを一様に嘆いています。

しかし、人間の生き物としての本能という点から考えると、それはごく当然のことなのだそうです。
そもそも、生物が生命を維持して子孫を残すという意味での「生き残る」ということを最優先して考えれば、決して余計な冒険などをせず、危険からはできるだけ身を遠ざけ、今まで確立された確実な方法で食料を得て、堅実に確実に毎日同じことをしながら生きていくことが、生き残ることができる確率が高くなります。

そんな大多数の安定志向の中に、ごく一部の少数派で新しいことを試そうという志向の人がいて、中には命を落とすようなこともありながら、新たな試みがうまくいくことがあり、それがその他大勢の安定志向の人たちが生き延びていく糧になっていきます。

もしも、大多数の人がチャレンジ志向では、リスクが高くて生き延びることができづらくなるので、人間が生き残るための本能としての安定志向なのだそうです。
こう考えれば、「新しいこと」「挑戦すること」ができる人材というのは、少数しか存在しないのは当然であり、リーダー、マネージャー、経営者という方々は、どちらかと言えばこの少数派に属するということになります。もしかすると、リーダー、マネージャー、経営者という方々でも、安定志向に属する人の方が多いのかもしれません。でもそれは生き物として当然だということです。

今現在のビジネスで、「挑戦する人材」「変革人材」が重要なことは間違いありません。ただし、それが多数派にはならないということを、認識しておく必要があると思います。

こういう状況に対して私が考える取り組み方法は二つ、まずは新しい物好きで、冒険をいとわない志向の人材を見極めて、その人たち中心に変革の役割を与えること、もう一つは、その他大勢の安定志向の人たちが感じる「安全」と「危険」の境目を少しずつずらすように仕向けることだと思います。

前者で重要なのは「適正な人材を選ぶ」ということであり、後者については「経験をさせる」ということだと思います。
特に後者について、その他大勢の人は、道筋さえ見えればそこについて歩こうとしますが、その道が舗装された道路でなくても、砂利道の林道でも大丈夫という経験をすれば、「安全」と「危険」の境目の基準は少し変わります。いきなり切り開くことはできなくても、少しだけ違うことは受け入れられます。

「変革人材」のような新しいことをする人というのは、人間の本能として少数派であるという前提で、育成を考える必要があると思います。
そして、多くの人は、少しずつであれば変われることを理解しておくことが大事だと思います


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