2018年6月1日金曜日

「人を雇う責任」を逆なでする人


会社として「人を雇う」ということには、相応の責任が伴います。人生の時間の一部を会社のために使ってもらい、それに対する報酬を支払い、その報酬がその人や家族の生活を支える訳ですから、「雇う」ということはその人の生活や人生を大きく左右します。

新入社員を採用するのは、40数年間で総額3億前後の投資をすることと同じですし、会社を立ちあげれば「人を雇って初めて一人前」などとも言われますから、結構大きなハードルだということは理解しなければなりません。
中には「人を雇う資格がない」と思うような経営者がいなくはないですが、多くの経営者は、社員に対して雇った責任を感じ、一緒に働く仲間として大事に思っています。

ただ、こういう経営者の気持ちを逆なでするような社員がいるのも、残念ながら事実です。
もう10年近く前のことなので、現在進行形の話ではありませんが、ある会社に転職してきて、かれこれ5年近く経った、その当時で50代後半の社員がいました。
その人は指示された最低限の仕事はするものの、それ以上のことは一切手出ししようとしません。「そんなことは自分の仕事ではない」と言い返してくる始末です。いつも口癖のように「自分はこの会社で仕方なく働いてやっている」と言っています。前職はそれなりの大企業だったようで、その頃のプライドが捨てられないようです。
いつも不平不満ばかりを口に出し、とにかく雰囲気を悪くするばかりだったので、上司をはじめとした周りの人たちは何かと困っていました。

一度、指示を守らなかった手抜きが原因で、顧客との間でトラブルとなり、そのことで始末書を書かせたことがあるそうですが、そのことに対して「自分の責任ではない」と執拗に会社を攻撃してきたそうです。
「働いてやっている」などと言うくらいですから、そんなに嫌なら別の会社に行けばよいと思いますが、常に悪態をつきながらも、会社にはずっとしがみついています。

こういうときにどうすればよいかと相談されましたが、私の答えは「あくまで法律に則って、毅然とした態度で接する」としか言えません。
詳細は法律の専門家に委ねますが、組織、人事を考える立場からすると、こういう人の存在は、職場環境への悪影響しかなく、「腐ったリンゴは、それを取り除くしかない」となります。

しかし、こういう人に対して会社ができることは、この人の行動態度の原因を探り、組織を乱す言動をやめるように注意し、影響を最小限に食い止める配置や仕事内容を考えるくらいしかありません。懲戒事由を積み重ね、最後の最後は辞めてもらうこともあり得ますが、そこまで行くにはかなりの手間と労力が必要になります。

ここまで極端な例は、私もそれまで見たことがありませんでしたし、たぶんめったにいないのでしょうが、これほどひどい相手でも、会社には「人を雇う責任」が求められます。
「そんな奴は辞めさせてしまえばよい」などとなるのかもしれませんが、実際にそれをやろうとすると、そんなに簡単なことではありません。
現状では、これも「人を雇う責任」なのです。

会社の方が力が強く、恣意的な振る舞いに陥りがちだということでは、仕方がないのかもしれませんが、さすがにちょっと理不尽な感じがします。パワハラが問題になる一方で、こういう人も実際には存在するのです。

こんな感じの人がいると、怒りというより何だか切なくなってしまいます。多くの時間を過ごす仕事の場なのに、せっかくの仕事の時間を、もっと楽しく有意義に過ごせばよいのにと思います。

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