2018年8月10日金曜日

医大入試の女子差別と企業の男女比から見える風土


東京医科大の一般入試で、女子と三浪以上の受験生が、合格しにくいように得点を操作していたとされる問題が、不正行為として批判されています。
受験生の立場であれば、裏ルールのような形で、本人が知らないところで一方的な不利を背負わされているのは、入学試験のシステムとしてはあまりに不誠実で不公正だと言わざるを得ません。批判されるのは当然のことでしょう。

その一方、この件ではこんな話がありました。
医師でタレントの西川史子さんが、あるテレビ番組の中で、「これは学校問わず当たり前」「成績順に取っていったら、女性の方が優秀で女子ばかりになる」と言っていました。

女性医師の割合が増えると、「眼科医と皮膚科医だらけになってしまう」とも言っていて、「股関節脱臼した体重が重い人を女性が背負えるかって言ったら無理」「女性の外科医は少なく、外科になってくれる男手が必要」「男性と女性ではできることが違うので、男女比率はちゃんと考えないといけない」という話でした。

他の記事を調べると、確かに女性医師が労働環境の厳しい外科などを敬遠し、命にかかわる急患などが少ない眼科や皮膚科を選ぶ傾向にあることは事実のようです。
厚生労働省の調査資料によると、女性医師の割合は、皮膚科が46.1%、眼科が37.9%に対し、外科は7.8%、整形外科は4.6%でした。

やはり、仕事内容による男女の特性に違いがあるのは間違いないようで、これを入試の段階で、しかも内緒で区別するという方法は、まったく適切ではありませんが、男女比をきちんと考えていかなければならないのは確かでしょう。

同じような男女比の話は、企業の中でもあります。よく聞くのは、特に新卒採用の場面で、「女子の方が優秀」「評価順に採用しているとみんな女子になってしまう」という話です。
ここでは、やはり男女別の定員数を持ち、男女比のコントロールはおこなっている会社がほとんどですが、採用の場合は単純なテストの点数だけではない総合評価なので、それが一律に不公正とは言えないでしょう。

ここで会社によって違いが出るのは、自社にとっての「適切な男女比」に関する見解です。
業界事情や仕事内容によるものもありますが、私が見てきた中では、結構その会社の企業風土を反映していると思うことがあります。
もちろん一概には言えませんが、例えば、歴史の長い会社の方が男性偏重の傾向があるとか、女性経営者の会社は女性比率が高めだとか、男性にこだわる会社の方が上意下達であるとか、そんなことが様々あります。

業務改革を進めて女性ではやりづらかった仕事をできるようにして、女性比率を上げている会社があるかと思えば、反対に女性を一生懸命採用しているにもかかわらず、定着せずに女性比率が上がらない会社もあります。どちらの会社も女性を歓迎する気持ちはあると思いますが、職場環境の中で何かが違っているのでしょう。

私がよく関わるIT業界の会社では、比較的男女差が少ない傾向ですが、それでも「男性比率が高い方が良い」という会社は今でもあります。これはもう経営者個人の価値観の問題であったり、「女性を採用したのにみんな辞めてしまった」などのマイナス体験が語られたりすることもあります。

私は、仕事を中断しなければならないライフイベントは女性の方が多いですから、それに対する配慮が必要だと思いますし、男女でできることの差のうち、テクノロジーなどで埋められるものは、その努力を会社もすべきだと思いますが、それですべての男女ギャップを埋めることはできません。
「男性と女性ではできることが違う」というのは間違いなく、男女比率はきちんと考えていかなければなりません。入試の件は、その調整方法を大きく誤ったということではないでしょうか。

企業にはそれぞれの風土があり、「適切な男女比」もそれぞれ違います。女性の職場、男性の職場と言われるところがありますが、それが合理的だったからそうなった面もあります。
いずれにしても、組織の男女比は、差別と言われない方法でコントロールする必要があると思います。

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