2018年8月13日月曜日

次は「シャイニングマンデー」? なぜ時間の使い方を強制したがるのか


毎月最終金曜日は、早く退社して余暇を楽しもうという「プレミアムフライデー」は、実施開始から1年半になりますが、結果的にはほぼ定着せず、もう失敗だと言い切ってしまっても良いでしょう。
やはり各企業の繁忙期との関係や、顧客との関係などをクリアして実施できたのは、一部業種の大企業などに限られていました。労働慣行や取引慣行、業務の繁閑サイクルなどは、企業によって大きく違うにもかかわらず、それを一律に同じようにすることを求めた点で、社会の現状をまったく読み違っていた結果だといえるでしょう。

しかし、この失敗を認めているのかいないのか、今度は日曜の夜までゆっくり遊んで、月曜日を午前半休にしようという「シャイニングマンデー」が検討されているとのことです。やる前から後ろ向きなことは言いたくありませんが、私はこれもやっぱりうまくいかないと思います。業務の繁閑サイクルなどに配慮されていないことは「プレミアムフライデー」と全く同じですし、その失敗した原因が何も解決されていないからです。

いろいろ問題だと思うのは、まずどちらの制度も行政機関の独断ではなく、経営者団体である「経済団体連合会」が、その導入を提唱したり要請したりしていることです。これは経営者自身が、自社の労働慣行や取引慣行、業務の繁閑サイクルなど、社会の現状を理解していないことになります。
経営者が「これくらいできるだろう」と現場に圧力をかけて、現場は「それはできません」と言っている訳ですが、これは最近いろいろ明るみに出ている企業不祥事と同じ構図です。経営者の姿勢に共通した問題を感じます。

また最近は、「サマータイム制」の話が、東京五輪の暑さ対策などとからめて導入を検討するとの話があります。こちらも、今のところ見えてきている意見は、システム改変などの社会的影響の大きさ、健康を害する懸念など、圧倒的に反対が多いようです。

これらすべての共通しているのは、「個人の時間の使い方に他人が手を突っ込む」という発想です。人を一斉に動かすことの効率性や影響力に注目してのことでしょうが、これを特に「人事」を専門にしている立場から言わせてもらえば、今の時流に全く反しています。
働き方や職業観、その他の価値観は多様化の時代であり、その多様化した意識にどうやって合わせていくか、応えていくかが、人が働く現場での実態です。

求められているのは、「プレミアムフライデー」「シャイニングマンデー」のような一律の縛りではなく、有給休暇の使いやすさやフレックスタイムのような労働時間に融通が利く制度であり、さらに働く場所まで含めた時間の使い方の裁量です。
会社としてできること、できないことを切り分けて、個別の要望に応じて話し合わなければなりません。

また「サマータイム」でいえば、日本でも北海道と沖縄の日の出と日の入りの時刻では、実質2時間くらいの時差があり、それを一律の標準時刻に合わせて活動しています。その土地の実態だけで言えば、西の人ほど「朝型勤務」を強いられているともいえる訳です。
この「朝型勤務」には、遺伝子レベルで適応できない人がいるという研究結果があり、それは太古の人類が集団生活する上で、仲間が寝ている間に起きている人がいることで外敵から身を守ることができ、朝型と夜型両方の人間がいるのが好都合だったということだそうです。
活動時間を一律に決められるのがつらい人がいて、そこから生まれる非効率もあるということです。

マクロの施策は影響力がありますし、大事なことではありますが、人の多様性をしっかり理解して向き合わなければ、特にこれからの時代では絶対にうまくいかないと思います。


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