2019年3月14日木曜日

いつまで「新卒一括採用」を続けるか


3月から会社説明会が解禁ということで、就活生の姿を数多く見かけるようになりました。
今年はここ最近の売り手市場がそのまま続き、短期決戦になるだろうということですが、実際にはもうすでに終息に向かっているという話もあります。

企業側は、個別の学生に対して、とにかく緻密で細やかな対応をすることが必須と言われていて、実際に街中のカフェや喫茶店で、一人ないしは数人の就活生に対して、企業のリクルーターか人事担当者と思われる人が、会社説明や面談をしている姿を目にします。
学生の資料をチラッと見ると、大手企業かその関連企業の名前がほとんどで、やはり大手志向が強まっていることと、そういう会社が人員を割いてこまめな活動をしている様子を感じます。

こういう状況になってしまうと、中小零細企業の新卒採用はますます難しくなります。応募者がいるだけマシというくらい、悲惨な活動状況の会社の話をいくつも聞きます。

そもそも新卒の一括採用が始まったのは、明治時代くらいまでさかのぼるほど古いそうですが、今のような枠組みになったのは1950年頃から高度成長期にかけてです。
長期的な人材育成をしたいという発想から始まっているので、かつての日本型雇用システムである「年功序列」「終身雇用」とは、とても相性が良い採用システムといえます。

一括採用のメリットは、採用活動がまとめて効率的に行なえること、それに続く教育もまとめて長期的に行なうことで、コストが減らせることがあります。
入社手続きや、以降の人事管理上でも、まとまって入社してくることで事務効率は上がりますから、やはり効率性という点は大きなメリットになります。

また、同時に大勢を入社させて同期意識を持たせることで、競争心から成長が早まったり、仲間意識や帰属意識で愛社精神が強まったりします。

企業が新卒者を採用したい理由で一番言われるのは、やはり意識がまっさらなので社風への順応性が高く、組織になじみやすいことが挙げられます。実際に帰属意識や定着率の高さが評価されることも多く、私の経験でも、そう感じることは数多くありました。
特に中小企業が新卒者を求める理由の多くはこちらにあり、それほど大人数を採用しないとすれば、効率という面はあまり強く意識していないように思います。

ただ、新卒を採用しようとすると、時期が決まっているので、他社が活動するのと同じ時期に活動しなければなりません。
大きな流れに合わせて活動するしかありませんが、そうやって限られた期間でみんなが一緒に動くと、特に就活生は接触できる社数に限度がありますから、当然優先順位をつけます。大手志向であれば中小企業は後回しになりますが、そうなると中小企業の新卒採用はどんどん難しくなります。応募者をまとめることができないので、一括採用のメリットである効率も失われていきます。

もう少し言えば、新卒の定着率が高いといっても、その会社に定年まで勤務する人は、決して多くはない時代になっています。大手企業にはそれなりにいても、中小企業では限りなく少ないでしょう。長期に渡る育成という発想は、大企業でさえも成り立たなくなってきています。
また、同期の競争心と言いますが、最近はそういうライバル心を持つ人が減り、自分は自分なりのペースで仕事をしようとします。競争をあおることでのモチベーションアップは難しくなっています。

私は「新卒一括採用」というのは、企業にとってすでにメリットが減ってきていて、どちらかというと、学校の卒業に合わせて就職したい学生側の事情の方が大きいと思っています。
早期化や青田買いの問題が言われますが、前倒しするにも限度がありますし、そうなれば、採用活動は「一括」から「通年」に変わっていくはずです。

後は「そうなる口火を誰が切るのかな?」という感じですが、いずれにしても「新卒一括採用にメリットがない」と見切る会社がそのうち出てくるでしょう。私が見えていないだけで、もうすでにあるのかもしれません。
また、中小企業では大企業以上に「新卒一括採用」のメリットはなくなっています。どうせ採用が難しいのならば、世の中の大きな流れは変えられなくても、あえて違う流れで活動してみる方法もあります。
一社だけですぐに変わることではありませんが、「いつまで“新卒一括採用”を続けるか」を、考え始めても良い時期ではないでしょうか。 

0 件のコメント:

コメントを投稿