2020年1月20日月曜日

「仕組み」と「仕掛け」の使い分けの話


ある会社で、身近な課題解決に現場主導で取り組む「ボトムアップによる組織改革」をお手伝いしています。
そのミーティングの中で、私から次のような話をしたことがあります。「仕組み」と「仕掛け」の使い分けという話です。

それぞれの言葉を辞書で調べると、どちらも似通った意味で使われていますが、ここで言っているのはあくまで私が定義したニュアンスで、「仕組み」とは“制度”、“規則”、“手続き”、“決め事”といった大きな枠組みにあたるもの、「仕掛け」と言っているのは、もう少し軽くて柔軟なニュアンスの“工夫”、“働きかけ”、“雰囲気づくり”といった身近な行動によるものです。

組織の改革や課題解決のためには、この「仕組み」も「仕掛け」もどちらも必要なことですが、現場から発信するようなボトムアップの取り組みの場合、どちらかといえば「仕掛け」の方が、優先すべき場面が多いと伝えています。

大きな理由は時間と労力です。組織で運用する「仕組み」を作るには、それを考えることだけでなく、上司や経営陣など、責任者から承認される必要があります。トップダウンで降りてくる「仕組み」もありますが、これをボトムアップで行おうとしたとき、それ以上の時間と労力がかかります。
一方、「仕掛け」というのは、現場レベルですぐにできることが大半で、場合によっては現場レベルでなければわからないこともあります。「仕組み」は待たなければなりませんが、「仕掛け」はすぐ実行に移せます。

例えば、最近は若手社員が社内の宴会や食事会に行きたがらないという問題があります。やはり仕事から離れた場で良いコミュニケーションが取れれば、それは仕事にも活きてくるので、何とか活性化したいと考えたとします。

この解決に向けた取り組みを「仕組み」でおこなうとすれば、主になるのは費用補助でしょう。適用になる目的や対象者を決め、回数や人数、限度額といった条件を決めます。申請方法や提出書類、報告の有無といったものもあるでしょう。もしかすると、「一定頻度で必ず実施するように」などと、開催が義務づけられることもあるかもしれません。
ただ、そんな「仕組み」が誰でも使い勝手の良いものになるかと言えば、それは人によって違いがあるでしょう。また「仕組み」が決まるまでも、その後に修正するのも、やはり相応の時間はかかります。
私の知る中では、こういう「仕組み」を効果的に運用する会社がある反面、強制感や反発を生んで逆効果になってしまっているような会社もあります。

一方、これを「仕掛け」でおこなおうとした場合、やることは「どうすればみんなが参加してくれるか、参加したくなるか」という工夫になります。
まず、突然誘うのではなく、事前に計画して声をかけるといった調整方法の問題があります。
みんなの好みを聞いたり、自分たちでは日頃なかなか行けないような店を利用したりするなど、お店選びの工夫があります。
人数や人選、その組み合わせなど、人に関することがあります。
それ以外にも場所の利便性や、ランチタイムなども含めた実施する時間帯、会費の金額、納得しやすい開催趣旨、アトラクションやサプライズ、参加者の志向に合わせた話題の準備など、考える余地はたくさんあります。
これらは、状況把握とアイデアさえあれば、わりと簡単にすぐできます。もしうまくいかなくても、修正や次の工夫は、やろうと思えばすぐにできます。
そして、こんな「仕掛け」の方が、はまると効果が高いことが多々あります。

特に現場レベルの課題では、「仕掛け」によって改善できることがたくさんあります。まずは、自分たちでできることからやってみようという姿勢が大切です。


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