2020年9月7日月曜日

「オフィス縮小」などの進め方で見える発想の違い

コロナ禍で在宅勤務をはじめとしたテレワークが一気に広がり、会社のオフィスで仕事をする時間は大きく減りました。私の周りでも、出社は週一回とか、一か月ぶりに会社に行ったとか、一部の外資系企業では年内は出社禁止といったところもあります。

 

そして、企業規模の大小を問わず、オフィスの在り方を見直す企業が増えています。

「オフィスを移転して面積を減らした」「複数拠点を統合した」「賃貸オフィスを解約してシェアオフィスにした」「本社住所だけ残してオフィスは解約した」など動きは様々ですが、使用頻度や稼働率が減った現状に合わせて、縮小または廃止する方向で見直しをしているケースがほとんどです。

 

あくまで私が見ている範囲ですが、結構よい場所にできた新築オフィスビルも、なかなかテナントが入らずいつまでも空きのところが数多く目につきます。オフィス需要が大きく変わりつつあるのは確かでしょう。

実際の仕事では、集まりたければ貸会議室やその他のレンタルスペースをその都度借りればよいですし、通常の打合せはリモート会議で問題なくできます。今までの拠点集中型オフィスを、サテライトオフィスのような分散型に置き換える動きもあります。

そんな流れは大企業にもおよんでいて、テレワーク推進に合わせてオフィス半減を掲げるような会社も出てきました。

これから、オフィスに対する考え方は、大きく変わっていくのでしょう。

 

こんな「オフィス縮小」ほかの施策が打ち出される中ですが、私はその進め方に注目しています。それがどんな順序、内容で進められるかを見ていると、その企業の考え方の本質が垣間見えることがあるからです。

ここで、私が言う「企業の考え方の本質」とは何かというと、「社員の生産性や働きやすさをどう支援するか」など、新しい働き方を社員とともにどう作っていくかを考えている会社と、あくまで「コストカット優先の発想」で取り組んでいる会社との違いです。

 

ここ最近、通勤手当を廃止する企業が増えています。定期券代に見合う通勤をしないわけですから、見直しは当然でしょう。

いくつかの会社は、通勤手当の代わりに「在宅勤務手当」などを新設して支給するそうですが、その金額は月数千円から1万円前後までで様々です。かなりの大手企業でも月額5千円という発表がされていました。

合わせて「オフィス縮小」を進めるという企業も数多くありました。

 

ここで、例えば通勤手当から月5千円の別手当に代わったとして、それと同額の定期代では、たぶん会社から4,5駅の移動しかできない程度の金額です。相当なコスト削減効果ですが、何か特別な投資や社員還元がない限り、そのメリットのほとんどは会社が享受します。

 

さらに「オフィス縮小」について言えば、これは縮小した分のオフィスを、「各社員の自宅ほかで肩代わりしてもらっている」という考え方もできます。そう考えれば、フロア代は社員に還元していかなければなりませんが、そうでなければ、コストカットのメリットはすべて会社のものになります。

 

これらはどちらも、「コストカット優先」の会社の典型的な対応ですが、こういう会社はどこかで「在宅勤務で社員は楽になった」と思っているように見えます。確かに移動が減って、時間の有効活用や体力面では良くなりましたが、働き方が変わったことで新たな悩みが増え、現場では試行錯誤が続けられています。変化への対応のために、社員も様々な苦労をしています。

 

ここで、「社員の生産性や働きやすさをどう支援するか」という視点がある会社は、在宅勤務の環境整備のため、備品や什器類の購入補助や貸与、通信環境の整備、シェアオフィスやサテライトオフィスの整備、食事の支援、在宅作業がしやすい社内システムの整備、コミュニケーション不足を補う施策など、環境面と金銭面を中心に、様々な支援策を打ち出しています。内容は各社でいろいろですが、「社員とともに新しい働き方を作っていく」という考え方は共通しています。

 

今は「コストカット優先」に見える会社でも、これから違う施策が出てくるのかもしれません。まだいろいろなことが動き出したばかりの変革期なので、やむを得ないところもあります。

ただ、テレワークをきっかけに始まった変化を、単なるコストカットの道具にすることだけは避けてほしいと思っています。

 

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