2020年10月5日月曜日

「プロ意識」と「転職」の関係

退職者に関する問題意識を持っている会社は相変わらず多く、相談される機会が多いテーマです。

ここ最近は「働き方改革」の流れもあり、職場環境の整備に力を入れる会社が増えました。もちろん会社によって対応できるレベルに限度はありますが、処遇、労働条件、職場環境をできうる限りまで高めようと、工夫や努力を重ねる会社がたくさんあります。

 

ただ、その効果が上がっているかというと、こちらも会社によっていろいろな状況がありますが、自分たちが満足するレベルになったという話は、残念ながらあまり耳にしません。

 

効果が上がらない理由の一つに、「働きがいの不足」が挙げられています。「働きがい」の定義として“働きやすさ+やりがい=働きがい”というものありますが、今は客観的に見えやすい“働きやすさ”に対応が偏っているように見えます。

この話は、現場の取り組みを見ている中では、それなりに根拠があると感じますが、では“やりがい”を高める方法はというと、これは簡単なことではありません。“やりがい”はほぼ個人の主観に基づくものなので、対応するにはとても多様な取り組みが必要になるからです。

「いろいろな仕事が経験できること」にやりがいを感じる人も、反対に「一つの仕事を長くじっくりできること」にやりがいを感じる人もいて、その矛盾した両方にこたえるには、それぞれ個別の主観に応じた対処をしなければなりません。これまでは普通のことだった会社主導の配置異動やキャリアパス設定では、もう対応していくことはできないでしょうこれまでの考え方を根本から考え直さなければならない時代になっています。

さらに、この“働きがい”が提供できたとしても、特に「プロ意識」が高い人の転職は、たぶん止められないだろうと思っています。

 

プロフェッショナルの転職で、私が思い浮かべるのはサッカー選手の移籍です。活躍したらさらに上のステージのチームを目指しますし、出場機会が得られないなど不本意な環境は、移籍でチームを変えることによって打破しようとします。

逆に選手が残りたくても残れないときはありますが、生え抜きで一つのチームしか知らないで引退するような選手は、特にサッカーではほとんど見かけません。

移籍金のシステムで、選手を送り出せばチームは報酬が得られるということはありますが、最高の環境のチームでも、選手は次を求めて移籍していきます。その理由は、やはり選手がプロで、自分にとってより良い環境を常に求めているからです。

 

これと同じような感覚での「転職」の話を、最近よく聞くようになりました。主に20代後半から30代あたりまでの若手社員です。

「働きやすくてやりがいがあって愛着もある良い会社だけれども、この会社でできることは経験したと思うので、卒業して次の会社で頑張る」などと言います。自分なりのキャリアパスを描いていて、そこで不足している経験やさらに上のレベルの仕事経験が、その会社ではできないとわかれば転職という選択をします。プロ意識が高い人ほどそういう傾向があります。

 

ここからすると、どんなに“働きやすい”環境を作っても、さらに“やりがい”を導いて“働きがい”を作り出しても、やはり辞める人は辞めてしまいます。プロ意識が高い“仕事ができる人”ほどその傾向が強いかもしれません。自社の努力で退職を食いとめることの限界です。

 

ただ、だからといって“働きやすさ”や“やりがい”を高めることが不要というわけではありません。今のところは、どちらかといえばそこまで高いプロ意識を持たない人の方が大半でしょう。今は多くの働き手のために、“働きやすさ”と“やりがい”が必要です。

なかなか思うようにいかない退職者対策ですが、「会社に頼らない」という意識が高まっていくと思われるこれからは、ある程度は仕方がないこととして割り切る必要があるのではないでしょうか。

 

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