2021年2月22日月曜日

「細かい人材要件」の善し悪し

採用活動を進める上で、求めている「人材要件」をきちんと具体的に明示することは大事です。

特に中小企業の採用では、退職者の欠員補充などの場面が多いこともあり、人材要件の明示も共有もあまりされていないことが多いように感じます。

 

ただ、だからといって「人材要件」は細かく決める方がいいのかといえば、決してそうとはいえません。

ある会社では、それまでに「採用してみたらクレームばかり言ってくる人材」「入社直後の早期退職の連続発生」「能力の過大評価による業務支障」など、様々な採用上のミスやトラブルを経験したこともあり、採用活動にあたって、わりと細かい人材要件を定めるようになりました。

しかし、要件を絞ったことで当然応募者は少なくなり、なかなか採用に結び付きません。過去の体験から慎重になりすぎて、せっかく応募があっても「あれがダメこれがダメ」と粗探しばかりになっているところもあります。

 

「人材要件」が細かいとなれば、それは組織の多様性には逆行します。よく「多様な人材がいる組織の方が強い」と言われるでしょう。

しかし、その反面「組織にはビジョンと方向性が大事」とも言います。これはみんなで同じ方向を向くということなので、人材が多様になると必然的にそれは達成しづらくなります。

 

このように矛盾することが両方大事だと言われるとき、だいたいはその両方のバランスを取ることが必要で、そのバランスが状況によって違っている場合です。

この「人材要件」のケースでいえば、あくまで私が経験上で感じていることですが、方向性重視か多様性重視かは、その組織の成長ステージによると思っています。

 

スタートアップから事業が軌道に乗って拡大し始めるミドルステージの前あたりまでであれば、同じ目標に向かって方向性を合わせて進むことが優先され、その認識を共有できるような共通した価値観や、その認識をベースにした一体感が重要です。そういう場合ではビジョンや方向性が必須で、多様性はともすれば邪魔になってしまう場面があるかもしれません。

しかし、事業が安定、成熟したレイターステージ以降となると、組織規模は当然大きくなり、様々な人材が様々な仕事に取り組む多様性が重要になってきます。ビジョンと方向性も必要ですが、多様な人材を最低限の共通的な価値観で、緩やかに包み込むようなものに変わっていくでしょう。

 

いずれにしても、この「人材要件」のように、組織運営の中では矛盾することがどちらも重要視されていて両方求められるようなことは結構良くあります。はっきりした正解はなく対応は常に難しいですが、少なくともどちらか一方のみが大事だと思い込んだり決めつけたりすることだけは、避けるように意識する必要があるでしょう。

「人材要件」一つをとっても、その場面に応じた善し悪しがあります。

 

 

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