2021年2月11日木曜日

何でも「罰則」でコントロールしようとする社長

ずいぶん前になりますが、仕事で少しお付き合いしたことがある社長のお話です。

 

組織改革を目的に、いろいろな施策をやろうとするまでは良いのですが、それぞれ若干ピントがずれていてなかなか機能しません。

 

ある時は「提案制度」でしたが、業種的な難しさもあって社員からの提案はほとんど出てきません。ごくたまに「職場環境の改善」という名目での苦情が上がってくるだけです。

これを見ていた社長は「建設的な提案しか認めない」としたために、ますます提案はなくなって制度として無いも同然の状態に陥ります。

 

ここでこの社長が言い出したのは、「提案数のノルマ化」とそれに伴う「罰則」です。マネージャーには部下から出てくる提案の数を管理させ、それに満たない者は人事評価で一律に減点すると言います。ほぼ全員のマネージャーが反対しますが、社長は言うことを聞きません。

その後どうなったかというと、社員たちは「ノルマを決められても出せないものは出せない」「勝手に減点すればいい」と開き直り、社長の根気も尽きたのか、この「提案制度」はそのまま立ち消えになっていきました。

 

この会社ではこういった話が年に数回あり、そのたびに打ち出される改善策は「罰則」です。時には罰金徴収などという明らかな法律違反が言われたこともありました。本来ならばどう活性化するかの「インセンティブ」なども合わせて考えるべきですが、この会社ではそういう動きはほぼありません。当然かもしれませんが社員は定着せず、退職者の多い会社でした。

 

その後この会社がどうなったのかは人づてに何となく聞きましたが、人材流出で業績が低迷して、会社は社員も一緒に他社へ事業売却、社長はそれとはまた別の会社で一従業員として淡々と仕事をしているそうです。

やはり「罰則」主体の組織運営では、社員はついてきてくれなかったということでしょう。

 

最近、新型コロナの関連法で罰則に関する議論がされましたが、「順序が逆」「効果的でない」などの批判が数多くありました。「罰則」を安易に使わない運用をするとのことですが、よく注意して見ていかなければなりません。

「罰則」というのは確かに必要な場面はありますが、例えば飲酒運転を厳罰化しても無くなりはしないように、「罰則」だけで人の行動をコントロールしようとするには限度があります。「アメとムチ」などと言いますが、その時の状況に応じて必ず両面が必要です。

 

「罰則」をはじめとした圧力だけでは、人の行動は変えられないことを認識しておかなければなりません。

 

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