2021年5月17日月曜日

「テレワーク」だからサボるのか?

多くの会社でテレワークが一般的になりましたが、そこで必ず言われる問題は、「コミュニケーション」と「生産性」です。

このうち「コミュニケーション」は、上司と部下をはじめ、一緒に仕事をするメンバー同士の作業場所が物理的に離れているために懸念されることで、実際にいろいろ工夫が必要な課題です。

これに対して「生産性」と言っている中身は、「進捗遅れ」といったこともあるでしょうが、本音は「仕事の進捗状況が把握できないから、サボるのではないか?」という懸念というよりは疑念です。

 

この“疑念”を払拭するために、様々なルールを設けている会社があります。中には常時カメラONや離席する度に理由を申告しなければならないなど、行動監視に近いものもあります。

また、パソコンの稼働状況を監視するようなツールを導入する会社もあります。ログイン時間やCPUの稼働状況、カメラの遠隔起動による在席確認、SNSや業務外のサイトアクセス、利用アプリやキー入力のログを取得する機能などがあって、各自の仕事振りが監視できるそうです。

部下の「サボり」を心配する管理者の一部からは、そのメリットを評価する声もあるようですが、通常の勤務以上の過剰な監視でストレスが増す、かえって信頼関係が失われるなど、総じて評判は良くないようです。

 

この「サボり」は、決してテレワーク特有の問題ではありません。出社勤務でも、人目を盗んでのネットサーフィンやSNS利用、頻繁な喫煙室通い、やけに長い昼休み、長時間の雑談、外回り営業での喫茶店や車内ほかでの時間つぶし、その他サボり行為はいろいろあります。そして程度の差はあれ、ほぼすべての社会人は、これら何らかのサボりをした経験があるはずです。

 

これがテレワークになったとして、サボりの中身はそれほど変わりません。同じように仕事と関係ないネット利用や動画視聴、長時間の休憩や私用外出といったものです。しいて言えば、テレワークではサボりが見つかる可能性が減るので、行為がエスカレートしやすいことはあるかもしれません。

 

人がなぜサボるかといえば、端的に言えば「サボっても大丈夫だから」です。とりあえず仕事はこなせている、サボりがばれない程度の成果が出ている、指示があいまいなので言い訳ができる、明確な目標や指示がないなどといったことは、「サボっても大丈夫」の気持ちが助長される条件です。

そもそも仕事の成果が出ているなら、ネットサーフィンをしようが時間つぶしをしようが、その人の行動モラル以外の問題はありません。

例えば、トップレベルで連戦連勝のアスリートが全然練習していなくても、結果が出ている限りはそれを批判することはできません。ただし、どんな天才でもそれでトップを張れるほど甘い世界ではありません。天才がさらに人並み以上のトレーニングをして、高い成果を得ようと努力して初めて結果が得られるのです。

 

「サボっても大丈夫」ということは、指示している仕事が簡単すぎるか、仕事の成果があいまいで評価できないか、いずれにしても目標設定や動機付けに問題があります。これは通常の出社勤務でもテレワークでも、問題点に変わりはありません。たぶん以前からあった問題が、テレワークでより明確になったに過ぎません。

これをプロセス監視だけで解決しようとしても、それには明らかに限界があります。これまでは直接見ている目の前で「仕事をしている振り」をされていて、かえってサボりを見抜けず欺かれていたのではないでしょうか。

 

さらに、ほとんどの社員は、そんな余裕でサボれるほど仕事をしていないことはありません。多少の息抜きはあっても、成果に向けて真面目に仕事に取り組んでいます。こういう人たちの監視を強めることには何のメリットもなく、かえってやる気を失わせて生産性を下げる恐れもあるでしょう。

 

サボる人は、どんなに監視を強めても、必ず隙を見てサボろうとします。周りからひんしゅくを買わずに済みそうな、バレずに済みそうなギリギリの線でサボり行為を展開します。監視する側の負担は増し、その割には成果につながりません。これは出社でもテレワークでも変わりありません。

必ずしも「テレワークだからサボる」というわけではないことを、認識しておく必要があります。

 

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