2021年5月27日木曜日

「支配型リーダー」の限界

最近は出会うことがずいぶん少なくなりましたが、「従来型」「古い」と言われてしまうタイプのリーダーは今でも存在します。自分が先頭に立ってトップダウンで指示をして、メンバーはそれに忠実に従うことを求める「支配型」と呼ばれるリーダーシップスタイルです。

見かけることがあるのは、40代後半以上の中高年世代がほぼすべてで、それ以下の若い世代で見かけることはほとんどありません。たぶん年功序列、高度成長やバブルなど、その人が育った時代背景と、それに基づいた成功体験が影響していると思われます。

 

「支配型」のリーダーが少なくなったのは、単純にそれではうまくいかないことが増えたからです。今でもそのスタイルを変えようとしない人を見ていると、やはりあまりうまくいっているとは言えないことがほとんどです。

メンバーたちから煙たがられて意見具申もありません。あまり人が寄って来ず、コミュニケーションが少なく、リーダーは情報が不足してきて判断を誤りやすくなります。メンバーの意見を聞かない、進め方が強引という姿勢の結果として、メンバーたちのモチベーションは下がり、当事者意識はなくなり、動きは鈍くなり、すべて言われた最低限のことだけで済まそうとします。

 

ただ、リーダー自身は意外にこの状況に気づいていません。それ以外に振る舞い方を知らないから自覚できないこともありますし、もともと支配欲が強いなどの資質を持ったリーダーでは、自分の支配的な姿勢に一切問題意識がなかったりします。結局自分の問題には気づきづらく、気づいたとしても直せないということになります。

 

「支配型」のリーダーにも強みはあります。ある程度明らかな成功パターンが見えている環境の場合や、リーダーの知識経験が他のメンバーよりも明らかに上という場合、リーダーが正しい答えを見つけ出している場合などでは、支配型リーダーでも十分に機能します。

ただ、最近うまくいかなくなったのは、支配型が機能するようなこれらの環境になることがほとんどなくなったからです。

世の中の志向やニーズが多様化して、画一化された成功パターンが見えることはほぼありません。環境変化が激しい中では、過去の経験が必ずしも正解とはなりません。これは働く人の志向でも同じで、みんなに同じことを言って一斉に「右向け右」とできることはほとんどありません。

このように、リーダーが自分だけの判断で、的確な指示を出し続けることはかなり難しくなっています。変化が激しい、未知の経験、選択肢が多いなど、多くの知恵が必要な場面では、支配型リーダーは立ち行かなくなります。

 

この「支配型リーダーシップ」に対して言われるのが「支援型リーダーシップ」または「サーバントリーダーシップ」です。コミュニケーションのしかたが「指示」ではなく「傾聴」であったり、「自分が引っ張る」のではなく「一緒に成長する」「相手に奉仕して導く」であったりする点で違いがあります。リーダーが一方的に決めて押しつけないので、メンバーは当事者意識を持って行動するようになり、結果としてチーム力が上がって結果もついてきます。

新人や未経験メンバーのみといった特殊なチーム状況や、短期で成果を出さなければならない緊急事態のように、「支配型リーダーシップ」が必要な特別な状況を除き、今は「支援型リーダーシップ」の方が機能しやすい場面が多いことから、こちらが取り入れられることが増えています。

 

今でも「支配型」で通そうとするリーダーは、この困難な環境を超越するほどの高い能力を持っていて十分に機能しているか、自分の指示が的確でないということに気づいていないかのどちらかで、多くの場合は後者となります。

いかにもリーダー的に見える「支配型リーダー」ですが、そこに限界があることは理解しておく必要があります。

 

 

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