2021年5月10日月曜日

「必要な対面」と「不要な対面」

最近は人が集まることが難しく、対面でお互いが直接顔を合わせる場面が少なくなっています。

そんな中でのことですが、たまたまの間違い電話がきっかけで最近お会いできていない知人と久しぶりに話す機会がありました。大した中身がある話でもありませんが、元気そうな声で近況を聞いたりして、対面ではありませんが直に接して会話して、そういう時間がとても新鮮に感じました。

 

リモートでの飲み会、交流会といったイベントには、私もときどき参加することがありますが、特に最近は「早く直接会えるようになりたいね」という言葉を交わすことが増えました。

ウェブ会議やチャットなどのITツールがあるおかげで、たぶん10年前ならほぼ全面的に止まっていたと思える仕事がどうにか継続できるのは有難いですが、それと同時に対面でなければ不自由なことがたくさんあることもわかりました。「直接会いたいね」という言葉が増えたのは、そんな不自由さを多くの人が共有するようになってきたということではないでしょうか。

 

その一方で、それまで対面でなければダメとされていたことの中に、実はそうでもないことがたくさん混じっていることも明らかになってきました。「みんなで集まるのが大事」といってあまり中身がない朝礼や社内集会、「とりあえず話し合おう」といって目的が定かでない会議やミーティング、「顔を出すのが重要」ととりあえず会いに行くだけで商談を一切しない顧客訪問など、対面が大事だという理由でおこなわれてきたことの中に、ただの精神論や先入観であまり意味のなかったものが数多くあります。

 

最近読んだ記事の中に、昨今の状況でも断固としてテレワークを取り入れない会社の話がありました。

テレワークに移行できる仕事が確実にあるにもかかわらず、緊急事態宣言中でも全社員が出社する体制が継続され、特に目立った感染対策はなく、社内環境は密のままで、全社朝礼のような集会イベントも、「みんなが顔を合わせて仕事をすることが大事」という理屈で変わりなく実施されていたといいます。

 

持病がある社員や高齢者と同居する社員から、テレワーク実施の強い要望が出されても変化はなく、とうとう社内に感染者が出て、それをきっかけに優秀な中核社員が退職を言い出したことで会社はようやく実施の方向に動き始めたそうです。ただその動きは遅く、以降2ヶ月以上たっても開始されないほどしぶしぶの様子だったそうで、会社がここまでテレワークに否定的だった理由は、とにかく経営陣が対面にこだわっていたことに尽きるということでした。

 

こんなことからわかるのは、コロナ禍で「必要な対面」と「不要な対面」のあることがはっきりしてきたという認識は共通していても、その境界線は人によって相当大きく違うということです。その基準は理屈ではない個人の価値観による部分も大きく、とらえ方の差自体も大きいように感じます。

 

テレワークの中で、機会を見つけて対面で面談したい上司と、リモート面談で十分として打診を拒む部下という話をよく聞きますが、この上司部下という関係だけでなく、会社と社員、発注元と受注先、面識の有無、個人的な好き嫌いなど、様々な立場の違いによって「必要な対面」「うれしい対面」と「不要な対面」「面倒な対面」のとらえ方は違うでしょう。

マネジメント、コミュニケーション、組織運営ほかの様々な場面で、今後はこういった「対面の使い分け」も念頭に置いておく必要があるでしょう。

 

今の状況が落ち着いてくれば、また人同士の交流は復活していくでしょうが、「対面」に行きつくまでのハードルは、以前よりも少し高くなったのかもしれないと思っています。

 

 

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