2021年7月19日月曜日

リーダーの「先延ばし」でみんなが動けない

場当たり的な感染症対策、準備ができていないとしか思えないオリンピック関連の様々な不備や不行き届きなど、大事なことがいろいろ滞っています。実は企業の現場でも同じような様子を目にすることがあり、それが昨今の状況がほぼ重なっているように感じたことからのお話です。

 

滞りの理由で共通しているのは、組織やチームのリーダーが、全体の仕事の進め方にかかわる、重要な判断や決断を「先延ばし」にしていることです。その結果、現場にしわ寄せが生じて作業が間に合わなかったり、準備が滞ったりしています。

 

ある会社でのことですが、毎年必ず組織改編があって、構想をまとめて新しい組織図を作るまでは社長の仕事とされています。ただ、この組織図の提示が年々遅れるようになり、直近では年度末の1週間前ということになっています。本来は新年度開始の1か月前を目途に確定することとされています。

 

遅れるようになったのは社長交代がきっかけです。新しい社長は組織図作りにこだわりがあるらしく、ああでもないこうでもないと中身を触り続けて、なかなか結論が出ません。役員会でスケジュール通りに確定したものを蒸し返して、再び議論していることもあります。

 

新年度の組織図が決まらないということは、現場に多大な影響があります。

まず、異動を含めた各部門の人事が確定できません。以前は新年度開始と同時にキックオフできていたのに、最近は2カ月遅れが定着しているそうです。顧客に異動の挨拶などがなかなかできなかったり、業務引き継ぎの時間が足りずにおろそかになってしまったりということがあります。名刺印刷ができず、ホームページの改訂もできません。

しかし、社長自身は自分の結論先延ばしが、大きなしわ寄せにつながっているという認識はありません。自分のせいでの遅れなのに、「早くしろ」などと逆に現場に催促するくらいですから、現場の一般社員がやっている具体的な仕事までは、残念ながら想像がつかないようです。

 

これはまた別の会社ですが、ある部品製造の会社で、工程全体の中で設計部門の仕事が遅れることが多く、その結果製造部門は常に短い納期での仕事を余儀なくされています。社内ではたびたび問題になって関係者で調整がおこなわれますが、設計部門のリーダーの主張が強いせいで、改善がなかなか進みません。

自分たちの作業の多さとか設計業務の重要性といったことを言いながら、いつも当たり前のように先延ばしを続けるそうです。設計が終わらなければ製造できませんから、後工程の製造部門にできるのは、催促することくらいしかありません。

これも、あるリーダーを中心に、自己中心的なスケジュール管理がおこなわれているためのしわ寄せ、滞りです。

 

こういうことは、本来であれば全体を通した最終的な期限(デッドライン)によって、途中経過のスケジュールと期限を設定し、各自がそれを守ることによって進めるものです。

ただ、実際にそうなっていないことは意外に多く、特に組織の上から降りてくるような事案ではよく見られます。前工程を担うのは権限が大きい組織上位のリーダーやマネージャーですから、この人たちが期限を軽視しても周りは文句を言えません。

結果として、リーダーたちの自己中心的な判断の先延ばしやスケジュール変更が定着してしまい、現場はいつもタイトな作業を要求されるようになります。時間不足で確認が手薄になったり、ミスが増えたり、やった方が良いことができなかったりということもあります。

 

この手の非効率は思いのほかよく見かけることですが、リーダー自身がそのことに気づいていなかったり、「自分の仕事の方が重要」などと現場作業を見下していたりする者もいます。リーダーに問題意識がないので、その人が入れ替わりでもしない限りは改善されることもありません。

 

リーダーは、自分がやっている先送りや先延ばしの行動が、実は多くのしわ寄せや滞りを生んでいることを自覚しなければなりません。「俺の仕事の方が大事」といった自己中心的な考えや、「間に合わないから仕方ない」といった安易さは、多くの負担と非効率があることを認識すべきです。

 

リーダーが「先延ばし」「先送り」をすると、他の周りのみんなが動くことができなくなります。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿