2021年7月15日木曜日

なぜ「いいから黙ってやれ」で済ませようとするか

命令はするけれども、そのことについて説明しない上司がいます。部下からいろいろ聞かれたり意見を言われたりしても、「いいから黙ってやれ」などと言って、説明せずに押し切ってしまうような人です。

こういうスタイルのマネジメントは「嫌われる」「反感を買う」などの感情的なことばかりでなく、最近は仕事の生産性や業績自体にも良い影響を及ぼさないことが明確になってきているので、今のマネージャーたちは一方的な指示命令ではなく、十分に説明し、意見交換をし、メンバーたちの納得性を高めた上で仕事に取り組むことがほとんどです。それでも主張が強い俺様型のリーダーは相変わらず存在しますし、上下関係がはっきりしている少し古いタイプの企業風土の会社では、今でもそういうところは見かけます。

 

私から見ていて、「いいから黙ってやれ」というタイプの人に共通しているのは、説明能力が足りない、寡黙、口べたなど、一言で言ってしまえばコミュニケーション能力がない、もしくは苦手だということです。そのせいで本人にはそういうつもりがないにもかかわらず、一方的な強制が多いマネージャーという印象を持たれています。その際の象徴的な言葉が、相手が納得してくれない苛立ちも含んだ「いいから黙ってやれ」です。

 

これが、コミュニケーション能力がある人の場合であれば、結構強権的に振る舞っていたとしても、相手からそういう印象を持たれずにすむところがあります。「いつもうまく丸め込まれる」などと言われますが、相手はそこまで強引な印象を持っていなかったりします。

 

こういったコミュニケーション能力は、本人が努力をしても簡単に改善できることではありません。口べたの人が急に饒舌になったり、寡黙な人が急におしゃべりになったりすることが非常に少ない様子を見ていれば、もともとの資質として仕方がないところでしょう。

 

これをカバーする方法として、もちろん本人にはできるだけの努力はしてもらうとして、実際には「他の誰かに自分の言いたいことを代弁してもらう」ということが現実的です。社長をフォローする専務がいたり、部長をフォローする課長がいたりするのはよく見かける状況であり、その役割を果たせる人がいると「いいから黙ってやれ」という発言はどこからも出てきません。

 

組織をまとめる立場の人間が、「いいから黙ってやれ」と言い出すと、チームの空気は一気に悪くなります。メンバーたちの納得感を軽視すると、うまくいくこともそうではなくなります。

 それを避ける方法は、マネージャーがコミュニケーション能力を高めるか、他の誰かにサポートしてもらうかの二つしかありません。

 

個人能力が急に改善することは、年令を重ねてくるほど難しいということを考えれば、自分の苦手分野をカバーしてくれる人材を意識的に見つけて、その人に自分の本心を理解してもらい、いつもフォローしてもらえるように身近にいてもらう必要があります。

一度でも「いいから黙ってやれ」と言った経験があるマネージャーは、こういうことも考えておかなければ、いつか自分の仕事が立ち行かなくなるかもしれません。

 

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