2022年3月7日月曜日

「具体的な意見、要望」の裏側にあること

職場環境や組織風土の問題を把握し、改善しようという取り組みは多くの企業でごく一般的に行われています。

その方法は、社員の個別面談を通じてヒアリングしたり、提案制度や目安箱といった仕組みであったり、組織風土や従業員満足度といった調査なども使われることがあります。出てくる結果の中には、具体的な要望や意見、提案がいろいろ挙がります。

 

そこにはとても細かい話もあり、例えばゴミ箱を増やしてほしい、トイレの洗面に整理棚が欲しい、電気ポットが欲しい、電子レンジが欲しいなど、購入して設置すればそれで終わりそうなものがあります。

もう少し会社らしいところでは、半休など有給休暇の分割取得などの働く環境に関すること、講座受講や書籍購入ほか自己啓発に関する費用支援といったお金に関するものも出てくることがあります。半休はもともと付与している休暇の範囲内でのことですし、費用支援も金銭的にそこまで高額な話ではないので、やるという判断ができれば、わりとすんなり実施できることです。

 

難しいのは人間関係の話と、「給料が安い」「手当が少ない」に代表される直接的な処遇の話があります。人間関係は一概に善悪が言えるものではありませんし、処遇は言われたからといって簡単に変えられるものではありません。できることは対応するとしても、それ以外は「話を聞いておく」というペンディング、先送りになります。

 

社員の意見をいろいろな形で吸い上げるのは大事な取り組みですし、望ましいこととも思いますが、実施するにあたっては注意しなければならないことがあります。

 

一つは、「話を聞くからには、答えを示さなければならない」ということです。意見や要望を聞くからには、必ず何らかの反応をしなければなりません。聞くだけ聞いて何もしないというのは最悪で、社員は「言うだけ無駄」と判断して、その後の改善意見は出てこなくなります。

話を聞く仕組みはあっても、それに対処、実行する仕組みがない会社がたくさんありますが、それでは話を聞くだけ逆効果になります。

できる、できない、その理由くらいはコミュニケーションを取っておかないと、やがて誰も意見を言わなくなります。自分から質問や意見を求めたからには、それに対する回答は必須です。

 

二つ目は、「本質的な問題の多くは、水面下に隠れていて見えない」ということです。

例えば、「有給休暇がきちんと消化できるように」という話があったとして、単に消化率を上げれば問題が解決するかというと、そういうことではありません。こういう意見、要望が出てくる裏には、それにつながる様々な問題が隠れています。

業務量が多くて休めない、休む時の代替要員がいない、上司が休暇取得に嫌な顔をする、気軽に仕事をカバーし合える人間関係がない、その他様々な要素が絡み合っており、そういった問題は必ずしも表面には出てきません。見えている課題のパッチワークだけをしても、本当の意味での職場改善は進みません。

 

もし、要望や意見を求めても、何も出てこないような会社だったとしたら、それは問題がまったくないからではなく、言えない何かがあるからです。

見えている現象は氷山の一角であり、その裏側にある様々なことを考えて、原因追及をしなければなりません。それでできて初めて、本当の職場改善につながるのです。

 

 

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