2022年7月4日月曜日

「エンゲージメント最低」への危機感など「未来人材会議」のレポートで思ったこと

経済産業省では、今後の人材政策を検討する「未来人材会議」を省内に設置し、未来を担う人材育成のあり方を提示するために調査や議論を重ねてまとめた「未来人材ビジョン」が発表されたという記事がありました。10~30年後の労働需要の推計、これからの人材育成の方向性や具体策が示されています。

 

「今の人材投資のあり方では日本の未来はない」という危機感が述べられており、

・日本企業の従業員エンゲージメントは世界で最低水準。

・日本は課長・部長への昇進が遅く、部長の年収はタイよりも低い。

・「現在の勤務先で働き続けたい」と考える人は少ないのに、「転職や起業」の意向を持つ人も少ない。

・転職が賃金増加につながらない傾向が強い。

・企業は人に投資せず、個人も学ばない。

など、様々な調査結果をもとにした指摘が並んでいます。

 

レポートのまとめには、雇用・人材育成や教育システムに関する大きなビジョンを示すことを主眼としたため、それぞれ詳細な検討にまで至らなかったと記されていました。

多くの分野の専門家や知見をお持ちの方々がかかわっており、興味があれば一度目を通してみる価値はあると思います。

 

このレポートに対する私の個人的な感想は、「共感」と「今さら感」と「少しの違和感」です。

課題指摘の一つに労働移動の少なさが挙げられており、そのことが日本の競争力を阻害しているといいます。「終身雇用」と「年功序列」、「解雇規制の強さ」などをはじめとした日本的雇用に起因すると言われ、それらを排して労働移動を促進すべきだといいます。人材の停滞が企業の人材育成投資や働き手の学ぶ姿勢を阻害しているといい、ジョブ型雇用などで専門性を高めることが生産性向上のために必要だといいます。

現状維持志向、楽な方へ流れることを課題と見ており、確かにそういう部分は理解できます。多くの調査結果からも同じ傾向が見られ、「共感」できるところはあります。

 

ただ、これらの調査結果で言われていることは、ここ数年で急に始まったことではありません。言葉の表現はいろいろ置き換わっていますが、少なくとも20年以上前から同じような指摘がされ続けています。

例えば「ジョブ型雇用」は、結局は昔から言われている職務主義の一種であり、新しい話ではありません。同じような課題指摘がされ続けているのになかなか変えられないというのは、何かしらの阻害理由があり続けるからです。「今さら感」はそんなところから出たものです。

 

もう一つ、「少しの違和感」というのは、これらの指摘が現場の様子とは必ずしも一致していないと感じることです。どうしても一部の大企業目線の分析に見えてしまうのです。

例えば「人材の流動性」は、中小企業ではすでに非常に高いです。多くの企業で常に中途退職者がおり、退職防止に腐心しています。人材不足が常にあり、中途採用による人材確保を継続的におこなっています。

 

この人材難の一方で、解雇や退職勧奨など雇用継続をしない働きかけも実際には行われています。法律的にはグレーなところも見受けられるので、肯定できることばかりではありませんが、実施されているのは間違いありません。「年功序列」は多少あったとしても、「終身雇用」と言い切れる状況はほとんどありません。

 

「エンゲージメント」の向上は、私も支援することが多いテーマですが、高いエンゲージメントを誇る会社は中小企業にも存在します。ただ、エンゲージメント向上は社員の定着につながることで、人材の流動性には反します。日本におけるエンゲージメントの低さを問題視しながら、人材の流動性を高めようというのは、少し矛盾する話です。

 

自ら学ぶ社会人は増えている感じがしますが、多くは在籍している会社の制度などを利用しています。自己負担するほどの金銭的余裕がなく、そこまでして学ぶ必要性は感じていないのかもしれません。

 

これらの課題に私自身が何か明確な処方箋を持っているわけではありませんが、雇用や人材育成課題への対策としてレポートで示されていることは、どうも一部の大手企業で起こっている問題で、全体を反映しているとは思えないものが数多くあります。

私が思う全体の共通項は「将来不安」であり、そのことがそれぞれの境遇の中で異なる形で表れていると思っています。そうであるとすれば、その対策は労働移動やジョブ型雇用ではありません。

さらに実態を見据えた議論を続ける必要があると思います。

 

 

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