2022年7月18日月曜日

「面倒見の良さ」と「おせっかい」の境目

 

特に若手社員を育てる中で、「面倒見が良い人」の存在は重要です。

大企業であれば、それなりの体制を作って、それぞれの社員に対して過不足がないような組織的な育成ができますが、中小企業ではなかなかそうはいきません。

 

そんな中で、人材育成に長けた企業には、その役割を担う「面倒見が良い人」「育てるのがうまい人」が必ずいます。属人的になるのは良いこととは言えませんが、スポーツの世界でも「名選手、必ずしも名監督にあらず」などという言葉があるように、仕事のできる人が教え上手とは限りません。

逆に選手や育成環境が変わっても必ず成果を出す指導者がいて、その人の指導を受けたい選手が全国から集まってきたりします。人材育成は指導者個人の力に左右されがちなところがあります。

 

「面倒見が良い人」は、一般的には「世話を焼くのが好きな人」や「人に気配りをしたり、助けたりすることが上手い人」をいいます。多くの中小企業では、この適性を持った人を念頭に、新人や若手社員の指導役を探します。人を教える、育てるということに関しては、やはり人によって向き不向きがあると感じます。

 

「面倒見の良さ」が重要だとは言うものの、それが行き過ぎた「おせっかい」と思われるような指導を目にすることがあります。

ある会社で目にしたことで、指導役は40歳代の女性社員でしたが、その指導している様子はまるで「お母さん」でした。

常に相手の様子を見ながら世話を焼き、手助けをしていることは良いのですが、段取りは全部自分が決め、仕事の進め方や手順を事細かに指示しています。自分の指示と違うやり方は、間違っているとは言えないことでも逐一修正しています。教えられる側は、何も考えずに指示に従っていれば、とりあえず仕事はうまくいくわけですが、それでは仕事が自分の身についたとは言えません。

女性社員は、周りから「教え過ぎ」「もっと自分で考えさせなければ」などと助言されていますが、教え方はどうしても直りません。

 

そんな指導方法を息苦しく感じるのか、一部の新入社員や若手社員からは不満の声が出てきます。「違うやり方を提案しても聞く耳を持たない」「もっと効率が良いやり方があるのに認めようとしない」などというものです。

ただし、その細かな指導が合っている人はいます。自信がない人、考えることが苦手な人、従順に従うタイプの人などは、わりと好ましく思っている様子です。逆に自分なりに考えている人、自律心の強い人、常により良い方法を探しているような向上心がある人などは反感を持ってしまうことがあり、中には辞めてしまう人も出てきます。教え方が「おせっかい」ととらえられているように見受けられます。

 

この「面倒見の良さ」と「おせっかい」の境目はどこにあるのかを考えると、それはそれぞれの人の心の中にあります。要は個人の主観だということです。

すべてを事細かに教えてもらえるなら、自分で考えて試行錯誤する必要はありませんし、失敗も少なくて済みます。あまり不安を持たずに仕事に取り組むことができます。

一方、教え過ぎと感じる人にとっては、やり方を押し付けられ、自分の考えを否定された形となってやる気が出ません。試行錯誤も重要な経験と考える人にとっては、初めから一つの答えを押し付けられる状態は、まったく好ましいものではありません。

この感じ方は、教えられる側の依存心と自律心のバランスによって変わります。

 

面倒を見ようとしない「放置」でも育つ人はごくまれであり、これが指導役に「面倒見の良さ」が求められる理由ですが、これが行き過ぎると「おせっかい」となり、そう感じやすいのは、どちらかと言えば自律的な行動を取りたがる人たちです。企業にとってはたぶん優秀と位置付けられることが多い人材でしょう。

 

適切な難易度を考慮して「どこまでやれるか」を明確化し、ヒントを与えて本人に考えさせ、その結果を尊重して仕事に取り組ませることは、人材育成の進め方としては重要です。

その人の性格、能力、適性に合わせた指導が必要であり、もし「おせっかい」と言われてしまったとすれば、その人に合わせた指導ができていない証明となります。

「面倒見の良さ」と「おせっかい」の境目は、教えられる人の感じ方次第です。

 

 

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