2023年1月9日月曜日

採用活動での「誇張」と「謙遜」

いくつか目についたアンケート調査で、新卒中途に限らず就職活動で自身の経歴や面接での回答を“盛った”経験のある人が6~7割に上るという結果がありました。程度に差はあれ、面接に臨む応募者の大半は、自分の実績や経験を何らかの形で誇張していることになります。

 

例えば新卒採用では、学生時代に力を入れてきたこと、いわゆる「ガクチカ」に関する質問がよくされます。学業、部活やサークル活動、アルバイトなど、語られる対象は人それぞれですが、ほとんどの人がそれなりの内容を答えます。そうは言っても、やはり内容の薄い人や真偽のほどが怪しい人はいます。

 

ここで、立派な内容が語られれば面接での評価が高いかと言えば、一概にそうとは言えません。見方によっては、内容が薄い人の方が正直だと言えるかもしれませんし、そもそも学生時代に打ち込める物を見つけられた人は希少かもしれません。部活動やアルバイトの経験が、そのまま仕事に活きることは多くはありませんから、あくまで応募者の人柄や素養、自社との相性をはかるための一つの材料でしかありません。

 

もうかなり前のことですが、ある知人の会社に応募してきた外国籍の人の経歴が、自社の求める要件にぴったりだったそうです。面接でのやり取りも自信満々で、こちらの期待していることを何でも「できる」「経験がある」と言っていたようで、社長や採用担当者はこの人を気に入って採用することになりました。

しかし、入社してすぐに、面接では自信満々に「できる」と言っていた内容は、実際にはほぼ未経験だったことがわかったそうです。他にもいろいろ見込み違いがあったらしく、すべて虚偽とは言えないようでしたが、かなりの誇張があったようです。ずいぶんもめた末に退職していったという話でした。

この会社の社長と担当者は「できないことまでできると言い切ってしまう神経が理解できない」「日本人だったらそこまで誇張しない」などと言っていましたが、盛った経験のある人が6、7割ということからすれば、国籍に関係なくこういうことがあってもおかしくはありません。

 

これとは逆に、もし採用面接で自分の経歴を常に「謙遜」して話す人がいたとしたら、それを「謙虚な人柄」などと肯定的にとらえることはたぶん少ないです。自信があることのアピールがあって、その上で見せた謙虚さであれば、そこで初めて総合的なプラスにとらえられます。謙虚さだけで採用に結びつくことは、たぶんほとんどありません。

 

こうやって見てくると、採用活動の中で「誇張」や「盛り」が起こるのは、応募者の心理から見ても必然といえます。逆に企業側がそういうエピソードを求めているために、「誇張」や「盛り」を助長させてしまっているという見方もできます。本当は入社してからの方が大事なのに、その前段で化かし合いのようなことが行われるのは、あまり好ましいこととは思えません。

企業の立場からすれば、応募者の本質を十分に見極めていくしかありませんが、一方的に「応募者の噓」を責めることはできないように思います。

 

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